インコペレットとは?栄養バランスを整えた総合栄養食

インコペレットは栄養バランスを科学的に調整した鳥用総合栄養食です。シードだけでは不足しがちなビタミンやミネラルを配合し、インコの健康維持に必要な栄養素をすべて含んでいます。海外では30年以上前から普及し、日本でも獣医師推奨の餌として広まっています。
インコペレットの定義と製造の仕組み
インコペレットとは、穀物・野菜・果物などの原材料を粉末状にし、ビタミンやミネラルを加えて固めた人工飼料のことです。「トータルペレット」とも呼ばれ、これだけで必要な栄養素をすべて摂取できる完全栄養食として設計されています。
ペレットの製造工程は以下の通りです。
- 原材料を粉末状に粉砕する
- ビタミン・ミネラル・アミノ酸を配合する
- 高温・高圧で成型し粒状にする
- 乾燥させて完成
この製造過程により、インコが選り好みできない形状になるため、栄養バランスの偏りを防げます。シードのように「好きな種子だけ食べる」という選択的給餌ができないのが特徴です。
ペレットが開発された背景と普及の歴史

インコペレットは1980年代後半、アメリカの鳥専門獣医師によって開発されました。当時、シード食のインコに栄養不足による病気が多発していたことが開発のきっかけです。
ハリソンペレットの創業者である獣医師は「インコの不調の6割は食事が原因」と指摘し、科学的根拠に基づいた総合栄養食としてペレットを世に送り出しました。その後、ズプリーム、ラウディブッシュなど複数のメーカーがペレット市場に参入し、現在では北米を中心に世界中で使用されています。
日本では2000年代から徐々に普及が始まり、近年では鳥専門病院の獣医師がペレット食を推奨するケースが増えています。ただし、日本国内でのペレット給餌率はまだ3割程度と推定され、シード食が主流の状況が続いています。
トータルペレットとメンテナンスペレットの違い
ペレットには「トータルペレット」と「メンテナンスペレット」という分類があります。両者の違いを理解しておきましょう。
トータルペレットは、これだけで完全な栄養を摂取できる総合栄養食です。全ライフステージに対応し、通常時も換羽期も同じペレットを与え続けることができます。以下のペレットがトータルペレットに該当します。
- イースター「インコセレクション トータルペレット」
- ズプリームズプリーム フルーツブレンド・ナチュラル
一方、メンテナンスペレットは日常的な健康維持を目的とした常用食のことです。ライフステージや体調に応じて、栄養価を高めたペレットに切り替える使い方をします。
- ラウディブッシュ:「デイリーメンテナンス」(通常時)⇔「ブリーダー」(換羽期・繁殖期)
- ハリソンペレット:「アダルトライフタイム」(通常時)⇔「ハイポテンシー」(換羽期・繁殖期)
どちらのタイプも日常的に主食として使用できますが、メンテナンスペレットを選ぶ場合は、換羽期や繁殖期に合わせて高栄養ペレットに切り替える必要があります。詳しい種類と使い分けについてはラウディブッシュ【メンテナンス】常用食ペレットの種類と選び方をご覧ください。
インコペレットとシードの違いを徹底比較


ペレットとシードは栄養バランス、保存性、コスト面で大きく異なります。ペレットは完全栄養食として設計され、シードは自然食として選択的給餌が可能です。それぞれの特徴を理解して最適な給餌方法を選びましょう。
栄養バランスの違い:完全栄養 vs 選択給餌
ペレットとシードの最も大きな違いは栄養バランスです。
ペレットは科学的に計算された栄養配分で、タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルがすべて含まれています。これだけで完全な栄養が摂れるため、サプリメントや野菜を追加しなくても健康を維持できます。鳥専門病院の獣医師が推奨する理由は、この栄養完結性にあります。
一方、シードは自然な種子そのものです。アワ・ヒエ・キビ・カナリーシードなどの混合シードが一般的ですが、種子だけでは栄養が偏ります。特にビタミンAとカルシウムが不足しやすく、野菜やネクトンSなどのサプリメントで補う必要があります。
シード食の利点は、インコが好きな種子を選んで食べられることです。この選択的給餌により、インコは食事の楽しみを感じられます。ただし、脂質の多いヒマワリの種ばかり食べるなど、栄養が偏るリスクもあります。
消化吸収率とフンの状態の違い
ペレットとシードでは消化のされ方が大きく異なります。
ペレットは原材料が粉末状に加工されているため、消化吸収率が高く、効率よく栄養を吸収できます。その結果、フンの量は少なめで、色は茶色や緑色になります。ただし、フルーツペレットの場合は着色料により赤・黄・緑などカラフルなフンになることがあります。
シード食の場合、殻を剥いて中身だけを食べますが、消化に時間がかかります。フンはペレット食より多く、色は緑色や茶色が基本です。シード食のフンは健康状態の判断がしやすいという利点があります。
消化器疾患のある鳥や、そのう下垂の鳥の場合、ペレットの方が消化しやすく負担が少ないとされています。ただし、製法によって消化速度が異なる点については後述します。
価格と保存性・入手しやすさの比較
コスト面と入手のしやすさも選択の重要な要素です。
ペレットは海外製が多く、初期コストが高めです。たとえば、ハリソンペレット454gは3,000円前後、ズプリームフルーツブレンド900gは約3,000~4,000円程度です(2025年11月時点)。
シードミックスはペットショップやホームセンターで手軽に購入できます。ペレットより安価ではあるものの、シード食はサプリメントや野菜の購入が必要となるため、トータルコストで見ると大差ない場合もあります。
保存性については、ペレットは酸化しやすく、開封後は冷蔵庫または冷凍庫での保存が推奨されます。一方、シードは常温保存が可能で、扱いやすいのが特徴です。
ペレットの保存方法についてはハリソンペレットの保存方法!小分け・冷凍・賞味期限【開封後】の疑問を徹底解説で詳しく説明しています。
飼い主の手間とメンテナンスの違い
日々の給餌の手間も比較のポイントです。
ペレットは餌入れに入れるだけで栄養が完結するため、飼い主の負担が少なくなります。野菜を切る手間やサプリメントを計量する必要がなく、時間のない飼い主には便利です。ただし、ペレットを食べない個体の場合、切り替えに時間と労力がかかります。切り替え方法はインコのペレット切り替えを成功させる【鳥種別】対応テクニックで解説しています。
シード食は給餌自体は簡単ですが、毎日の野菜提供とサプリメント投与が必要です。また、殻が餌入れに残るため、こまめな掃除が求められます。一方で、発芽シード&スプラウトバードチョップのおいしいフォージングレシピのように、手作りフォージングを楽しめる利点もあります。
理想的な給餌方法は、ペレット70~80%とシード20~30%の併用です。この割合なら、ペレットで栄養を確保しつつ、シードで食の楽しみも提供できます。
具体的な給餌方法として、ペレットを主食として朝に与え、シードは少量をおやつとして夕方に与える方法が推奨されます。逆にシードを先に与えると、ペレットを食べなくなる可能性があるため注意が必要です。
詳しくはオカメインコの餌おすすめ4選とペレット70%バランス食をご参照ください。
インコペレットの種類・粒サイズ・形状別の特徴

ペレットには粒の大きさ、形状、着色の有無など様々な種類があります。鳥種や個体の好み、ライフステージに応じて最適なタイプを選ぶことが、ペレット切り替えの成功率を高めます。
粒サイズ別の分類(スーパーファイン・ファイン・ミニ・スモール等)
ペレットの粒サイズは鳥種に合わせて選ぶのが基本です。主要メーカーのサイズ展開を見ていきましょう。
主要メーカーの粒サイズは以下の通りです。ズプリームはXS(約1~2mm)・S(約3mm)・M(約5mm)・L(約8mm)、ハリソンはマッシュ(粉末)・スーパーファイン(約2mm)・ファイン(約3mm)・コース(約5mm)、ラウディブッシュはニブルズ(約1~2mm)・ミニ(約3~4mm)・スモール(約5mm)の展開があります。
セキセイインコにはスーパーファイン~ファインサイズ、オカメインコにはファイン~ミニサイズが適しています。詳しい選び方はハリソンペレット選び方ガイド!種類・サイズ・適応時期まで徹底解説をご覧ください。
フルーツペレットとナチュラルペレットの違い
ペレットは味付けによってフルーツペレットとナチュラルペレットに分類されます。
フルーツペレットは、果物やジュースを配合して甘みと香りをつけたペレットです。嗜好性が高く、シードからの切り替えがしやすいのが特徴です。代表的な製品として、ズプリームフルーツブレンドやラフィーバーグルメペレットがあります。
ナチュラルペレットは、人工的な香料や着色料を使わず、穀物や野菜の自然な風味を活かしたペレットです。添加物が少ないため、健康志向の飼い主に人気があります。ハリソンペレットやラウディブッシュペレットがナチュラルペレットの代表格です。
フルーツペレットは食いつきが良い反面、糖分が多く太りやすい傾向があります。一方、ナチュラルペレットは食いつきが悪い個体もいますが、余計な添加物がない分、健康面では優れています。
どちらが良いかは個体差によります。まずはフルーツペレットで切り替えを成功させ、慣れてきたらナチュラルペレットを混ぜていく方法も有効です。フルーツペレットの選び方についてはフルーツペレットの選び方ガイド!原材料表示の読み方から保存方法まで徹底解説をご参照ください。
着色ペレットと無着色ペレットのメリット・デメリット
ペレットには着色されたものと無着色のものがあります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
着色ペレットは、赤・黄・緑・オレンジなどカラフルに着色されたペレットです。見た目が華やかで、インコの興味を引きやすいのが利点です。ズプリームフルーツブレンドが代表的な着色ペレットで、セキセイインコやオカメインコの食いつきが良いと評判です。
ただし、着色ペレットには重要なデメリットがあります。それは、フンの色が赤や黄色に変わってしまい、健康状態のチェックがしにくくなることです。通常、インコのフンは緑色や茶色ですが、着色ペレットを食べるとフンが赤や黄色になるため、血便や異常なフンの色を見逃すリスクがあります。
無着色ペレットは、茶色やベージュの自然な色をしたペレットです。ハリソンペレット、ラウディブッシュペレット、ズプリームナチュラルなどが該当します。フンの色が自然な緑色や茶色のままなので、健康チェックがしやすいのが最大のメリットです。
鳥専門病院の獣医師は、健康管理の観点から無着色ペレットを推奨することが多いです。特に病気の既往歴がある鳥や、シニア期の鳥には無着色ペレットが適しています。
クランブル・ペレット・マッシュの形状別特徴
ペレットには粒状以外に、クランブルやマッシュといった形状もあります。
クランブルは、ペレットを粗く砕いた形状です。粒ペレットより小さく、マッシュより大きいため、粒ペレットが大きすぎる幼鳥や、小型のインコに適しています。また、粒ペレットを食べない個体に試す価値があります。
ペレットは、一般的な粒状のペレットのことです。直径1~8mm程度の円柱形や球形で、サイズ別に展開されています。最も流通量が多く、選択肢が豊富です。
マッシュは、ペレットを粉末状にしたものです。ハリソンペレット【マッシュ】が代表的で、挿し餌に混ぜたり、病気で固形物が食べられない鳥に与えたりします。水やお湯でふやかして使用するのが一般的です。
切り替え初期には、マッシュをシードに振りかけてペレットの味に慣れさせる方法もあります。セキセイインコのペレット切り替えに「ふやかして混ぜる」方法で成功という体験談も参考になります。
ペレット製法と押し出し製法の違い


ペレットには「ペレット製法」と「押し出し製法」の2種類があり、製法によって消化速度や嗜好性が大きく異なります。愛鳥の体質や健康状態に合わせて最適な製法のペレットを選ぶことが重要です。
ペレット製法の特徴と適した鳥
ペレット製法(コールドプレス製法)は、原材料を粉末にした後、低温で圧縮して固める製法です。熱による栄養素の破壊が少なく、素材本来の栄養価を保てるのが特徴です。
ペレット製法のペレットは、消化がゆっくりで腹持ちが良いという特性があります。また、水分の吸収が少ないため、そのうの中で膨らみにくく、そのう炎のリスクが低くなります。
この製法のペレットが適しているのは、以下のような鳥です。
- 太りやすい体質の鳥
- 発情しやすい鳥
- 活動量が少ない老鳥
- 過食傾向のある鳥
代表的なペレット製法の製品は以下の通りです。
- TOPsペレット
ただし、ペレット製法のペレットは硬く、嗜好性がやや低い傾向があります。シードからの切り替えに時間がかかる場合もありますが、一度慣れれば長期的に健康維持がしやすいペレットです。
【注意】TOPsペレットはオーガニックだが総合栄養食ではない

TOPsペレットは100%オーガニック原料を使用していますが、総合栄養食ではありません。
TOPsペレット(トップスパロットフード)は、他の多くのペレットと異なりビタミン類とミネラル類の栄養添加がされていないため、総合栄養食ではありません。主食として与える場合は、総合ビタミンサプリメントやミネラル補助剤を必ず併用する必要があります。また、他のペレットと併用する場合は、TOPsペレットが全体の3割以下に留めるように推奨されています。これは不足しがちな栄養素を補うための注意点です。したがって、TOPsペレット単独だけで鳥の栄養を完全に賄うことはできません。
押し出し製法(エクストルーデッド)の特徴と適した鳥
押し出し製法(エクストルーデッド製法)は、原材料を高温・高圧で加熱しながら押し出して成型する製法です。加熱により殺菌効果が高く、保存性に優れています。
押し出し製法のペレットは、消化が早く、水分を吸収しやすいのが特徴です。そのうの中で膨らみやすいため、少量でも満腹感が得られます。また、サクサクとした食感で嗜好性が高く、シードからの切り替えがしやすい傾向があります。
この製法のペレットが適しているのは、以下のような鳥です。
- 消化器疾患のある鳥
- そのう下垂の鳥
- 幼鳥(成長期)
- 痩せやすい体質の鳥
代表的な押し出し製法の製品は以下の通りです。
- ラウディブッシュペレット
- ラフィーバーペレット
- ハリソンペレット
- ズプリームペレット
- 黒瀬neo
- イースター インコセレクション
押し出し製法のペレットは食いつきが良い反面、消化が早いため空腹感を感じやすく、過食につながることもあります。発情しやすい鳥には注意が必要です。
インコペレットの主な成分と理想的な栄養価

ペレットにはタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルが科学的根拠に基づいて配合されています。理想的な栄養成分の数値を知ることで、愛鳥に適したペレットを見極められます。
【重要】理想的な栄養成分の数値(タンパク質12%・脂肪4%)
インコペレットの理想的な栄養成分は、鳥類栄養学の研究に基づいて設定されています。
通常時の理想的な栄養バランスは以下の通りです。
- 粗タンパク質:12%前後が理想
- 粗脂肪:4%前後が理想
- 炭水化物:50~60%
- 粗繊維:3~6%
タンパク質12%、脂肪4%という数値は、健康な成鳥が日常的に活動する上で最適なバランスとされています。この数値を基準に、ペレットの成分表示を確認しましょう。
主要ペレットの成分例として、ハリソンは粗タンパク質14%以上・粗脂肪6%以上、ラウディブッシュは粗タンパク質11%以上・粗脂肪6%以上、ズプリームは粗タンパク質14%以上・粗脂肪4%以上となっています。多くのペレットが理想値に近い設計ですが、脂肪分はメーカーによって差があるため、太りやすい鳥には脂肪4%前後のペレットを選ぶと良いでしょう。
ライフステージ別の必要栄養価(通常・換羽期・繁殖期)
インコのライフステージによって必要な栄養価は変化します。
換羽期や繁殖期には、通常時より高い栄養価が必要です。
- 換羽期:粗タンパク質15%以上が推奨
- 繁殖期:粗タンパク質15%以上が推奨
- 幼鳥期:粗タンパク質16~18%が推奨
- 老鳥期:粗タンパク質10~12%が推奨
換羽期は新しい羽毛を生成するため、タンパク質とカルシウムの需要が高まります。セキセイインコの換羽期の食べ物!ペレット・サプリ・野菜・シードの選び方でも詳しく解説しています。
換羽期に適したペレットの例は以下の通りです。
- ハリソン ハイポテンシー(粗タンパク質18%以上)
- ラウディブッシュ ブリーダー(粗タンパク質14%以上)
繁殖期も同様に高タンパク質のペレットが推奨されます。卵の形成にはカルシウムも必要なため、カルシウムサプリの併用も検討しましょう。
老鳥期には、逆に栄養過多を避けることが重要です。活動量が減るため、高カロリーのペレットは肥満や脂肪肝のリスクを高めます。老鳥にはタンパク質10~12%程度の低脂肪ペレットが適しています。
ビタミン・ミネラルの配合バランス
ペレットには必須ビタミンとミネラルが配合されています。
主要なビタミン成分は以下の通りです。
- ビタミンA:視力・免疫力・皮膚の健康維持
- ビタミンD3:カルシウムの吸収促進・骨の健康
- ビタミンE:抗酸化作用・細胞の保護
- ビタミンK:血液凝固・骨代謝
- ビタミンB群:エネルギー代謝・神経機能
シード食ではビタミンAが不足しやすく、角膜炎や免疫力低下の原因になります。ペレットはビタミンAが適切に配合されているため、この問題を解決できます。
主要なミネラル成分は以下の通りです。
- カルシウム:骨格・卵殻の形成
- リン:骨格形成・エネルギー代謝
- マグネシウム:筋肉・神経機能
- ナトリウム:体液バランス
- 鉄:ヘモグロビン合成
カルシウムとリンのバランスは2対1が理想とされ、多くのペレットはこの比率で配合されています。ネクトンMSAのようなカルシウムサプリは、ペレット食でも換羽期や産卵期に追加することがあります。
原材料表示の見方
ペレットの原材料表示を簡単に確認しておきましょう。
原材料は配合量の多い順に記載されます。最初の3~5項目が主原料なので、ここをチェックすることが重要です。
良質なペレットの原材料例はこちらです。
- 全粒穀物(玄米、大麦、オーツ麦など)
- 豆類(大豆、エンドウ豆など)
- 野菜・果物(ケール、ニンジン、リンゴなど)
避けたい原材料はこちらです。
- 砂糖・コーンシロップ(過剰な糖分)
- 人工着色料(健康への懸念)
- 副産物(品質が不明確)
オーガニックや非遺伝子組み換え原料を使用したペレットもあります。原材料の詳細な解説については、フルーツペレットの選び方ガイドが参考になります。
インコペレットのメリットとデメリット

ペレットには栄養バランスの良さや給餌の簡便性というメリットがある一方、食いつきの悪さや初期コストの高さというデメリットもあります。両面を理解した上で導入を検討しましょう。
ペレット給餌の5つの主なメリット
ペレット給餌の主なメリットを5つ紹介します。
メリット1:完全栄養食でサプリ不要
ペレットはビタミン・ミネラルがすべて配合された完全栄養食です。シード食のように野菜を毎日用意したり、ネクトンSなどのサプリメントを投与したりする必要がありません。忙しい飼い主にとって、時間と手間の節約になります。
メリット2:健康管理が簡単
栄養バランスが一定なので、体重管理がしやすくなります。シード食では脂肪の多いヒマワリの種を食べすぎて太ることがありますが、ペレット食ではそのリスクが減ります。また、フンの状態も安定するため、健康チェックがしやすくなります。
メリット3:消化が良い
ペレットは原材料が粉末加工されているため、シードより消化吸収率が高くなります。特に押し出し製法のペレットは消化が良く、消化器疾患のある鳥や老鳥に適しています。
メリット4:病気の原因究明がしやすい
ペレット食は栄養が一定なので、体調不良が起きた時に原因を特定しやすくなります。シード食の場合、野菜やサプリなど複数の要素があるため、何が原因かわかりにくいことがあります。
メリット5:獣医師推奨
鳥専門病院の獣医師の多くがペレット食を推奨しています。特に病気の治療中や術後の回復期には、栄養管理のしやすいペレット食が適しているとされます。
ペレット給餌で注意すべき4つのデメリット
ペレット給餌のデメリットも確認しておきましょう。
デメリット1:食いつきが悪い個体がいる
シード食に慣れた鳥は、ペレットを餌と認識しないことがあります。特に成鳥になってからの切り替えは難しく、数週間から数ヶ月かかる場合もあります。ペレットを食べないセキセイインコが爆食したハリソンペレットのような体験談も参考になります。
デメリット2:単調で退屈
ペレットは毎日同じ味・食感なので、鳥によっては飽きてしまいます。シード食には選択的給餌の楽しみがありますが、ペレット食にはそれがありません。ズプリームフルーツブレンドしか食べないとペレット難民になるリスクもあるため、フォージングトイを活用したり、複数種類のペレットをローテーションしたりして、食事に変化をつける工夫が必要です。
デメリット3:初期コストが高い
ペレットは海外製が多く、シードより高価です。ただし、野菜やサプリの購入が不要になるため、長期的に見るとコストはそれほど変わりません。
デメリット4:着色ペレットはフンの色が変わり健康チェックがしにくい
これは非常に重要なデメリットです。着色ペレット(特にズプリームフルーツブレンド)を与えると、フンが赤・黄・緑などカラフルに変わります。その結果、血便や異常なフンの色を見逃すリスクがあります。健康管理を重視するなら、無着色ペレット(ハリソン、ラウディブッシュ、ズプリームナチュラル等)を選ぶことをおすすめします。
着色ペレットの健康チェック上の問題点
着色ペレットの問題点をもう少し詳しく見ていきます。
正常なインコのフンは、緑色の固形部分と白い尿酸塩、透明な尿で構成されています。この色の変化を観察することで、病気の早期発見ができます。
- 黒いフン:消化管出血の可能性
- 赤いフン:血便の可能性
- 黄色いフン:肝臓疾患の可能性
- 白いフン:膵臓疾患の可能性
着色ペレットを食べていると、フンが常に赤や黄色なので、これらの異常を見逃してしまいます。特に病気の既往歴がある鳥や、老鳥の場合は、健康チェックのしやすさを優先して無着色ペレットを選びましょう。
どうしてもフルーツペレットを使いたい場合は、定期的に無着色ペレットに切り替えて、フンの色を確認する習慣をつけることが大切です。
シードとペレットの併用という選択肢
ペレットの欠点を補う方法として、シードとの併用があります。
理想的な割合は、ペレット70~80%、シード20~30%です。この併用方法なら、以下のメリットがあります。
- ペレットで栄養バランスを確保
- シードで食の楽しみを提供
- 飽きによる食欲低下を防ぐ
- フォージング行動を促す
併用する場合は、ペレットを主食として朝に与え、シードは少量をおやつとして夕方に与える方法が推奨されます。逆にシードを先に与えると、ペレットを食べなくなる可能性があります。
オカメインコの餌おすすめ4選とペレット70%バランス食では、具体的な併用方法を詳しく解説しています。
獣医師の見解としては、「ペレット100%が理想だが、ペレット70%とシード30%の併用でも十分に健康を維持できる」とされています。愛鳥の好みと健康状態に合わせて、柔軟に対応しましょう。
併用時の具体的な給餌スケジュールとしては、朝にペレットを与え、夕方にシードを少量与える方法が効果的です。逆にシードを先に与えると、ペレットを食べなくなるリスクがあるため注意が必要です。また、同じ容器で混ぜるとシードだけを選んで食べる傾向があるため、別々の容器で与えることをおすすめします。
インコペレットの選び方:鳥種別・目的別ガイド

セキセイインコ、オカメインコ、中型インコなど鳥種によって最適なペレットは異なります。また通常時、換羽期、繁殖期などライフステージに応じた選び方を知ることで、愛鳥に最適なペレットが見つかります。
セキセイインコに適したペレットの選び方
セキセイインコは体重30~40g程度の小型インコです。粒サイズはスーパーファイン~ファインサイズ(直径1~3mm程度)が適しています。
セキセイインコ向けペレット選びの3つのポイントはこちらです。
- 粒サイズ:スーパーファイン~ファインサイズを選ぶ
- 栄養価:粗タンパク質12~14%、粗脂肪4~6%が目安
- 製法:発情しやすい個体にはペレット製法が推奨
初めてペレットに切り替える場合は、食いつきの良いフルーツペレットから始めるのがおすすめです。ただし、着色ペレットは健康チェックがしにくいため、慣れてきたら無着色ペレットも混ぜていきましょう。

セキセイインコは発情しやすい傾向があるため、発情抑制が必要な場合は、腹持ちの良いペレット製法の製品が適しています。詳しくはインコの発情抑制ペレットの選び方をご覧ください。
オカメインコに適したペレットの選び方
オカメインコは体重80~110g程度の中型インコです。粒サイズはファイン~ミニサイズ(直径3~5mm程度)が適しています。
オカメインコ向けペレット選びの3つのポイントはこちらです。
- 粒サイズ:ファイン~ミニサイズを選ぶ
- 栄養価:粗タンパク質12~14%、粗脂肪4~6%が目安(脂肪肝予防)
- 製法:消化器に優しい押し出し製法または低脂肪のペレット製法
オカメインコは脂肪肝になりやすいため、脂肪分が適切にコントロールされたペレットを選ぶことが重要です。また、オカメパニックによるストレスで食欲が落ちることもあるため、複数のペレットをローテーションして食事に変化をつけましょう。
ちなみにわが家では、ファインだと割って飛び散らせる量が多いので、スーパーファインを半分混ぜて与えています。


中型インコ(コザクラ・ボタン)向けペレット
コザクラインコやボタンインコは体重40~60g程度の中型インコです。セキセイとオカメの中間サイズのペレット(直径3~5mm程度)が適しています。
中型インコ向けペレット選びの3つのポイントはこちらです。
- 粒サイズ:ファインサイズ~ミニサイズを選ぶ
- 栄養価:粗タンパク質12~14%が目安
- 製法:発情しやすい鳥にはペレット製法が推奨
コザクラインコは発情しやすく、卵詰まりのリスクも高い鳥種です。発情抑制のためには、腹持ちの良いペレット製法の製品が推奨されます。
ボタンインコも同様に発情管理が重要です。発情抑制ペレットを活用して、健康を守りましょう。
ライフステージ別の選び方(通常・換羽期・繁殖期・老鳥)
インコの年齢や状態に応じて、ペレットを使い分けることが大切です。
通常時(成鳥)に適したペレットはこちらです。
- ハリソン アダルトライフタイム
- ラウディブッシュ デイリーメンテナンス
- ズプリーム フルーツブレンド・ナチュラル
換羽期に適した高タンパク質ペレットはこちらです。
- ハリソン ハイポテンシー(粗タンパク質18%以上)
- ラウディブッシュ ブリーダー(粗タンパク質14%以上)
換羽期のペレット選びについては、セキセイインコの換羽期の食べ物やオカメインコ換羽期の栄養管理が参考になります。
繁殖期も換羽期と同じく高タンパク質ペレットが推奨されます。特にメスは産卵でカルシウムを大量に消費するため、ネクトンMSAなどのカルシウムサプリを併用しましょう。
老鳥期(セキセイ7歳以上、オカメ13歳以上)には、低カロリー・低脂肪のペレットが適しています。通常のアダルトライフタイムやデイリーメンテナンスで問題ありませんが、活動量が極端に減っている場合は給餌量を調整します。
国産ペレットと海外製ペレットの違い
日本国内では国産ペレットも流通しています。
主な国産ペレットはこちらです。
- neo(黒瀬ペットフード)
- リトルバードセレクションPRO(イースター)
- インコセレクション トータルペレット(イースター)
- キラピピ インコ用ペレット(NPF)
国産ペレットの利点は、入手しやすく価格が手頃なことです。また、日本の気候に合わせた保存性の高さもメリットです。

一方、海外製ペレット(ハリソン、ズプリーム、ラウディブッシュ等)は、長年の研究と実績があり、品質が安定しています。鳥専門病院の獣医師が推奨するのも海外製が多い傾向です。
どちらが良いかは一概に言えませんが、まずは愛鳥が食べてくれるペレットを見つけることが最優先です。国産・海外製にこだわりすぎず、複数のペレットを試してみましょう。
なお、一部の鳥にはラウディブッシュなどペレット製法の製品が健康面で優れていますが、これらは専門店や通販での購入が中心です。療養食については軽く触れておくと、ラウディブッシュには病気の鳥向けの療養食ラインがありますが、詳細は獣医師と相談の上で選びましょう。
複数ペレットのローテーションと混合使用
複数のペレットを組み合わせて与えることは、栄養の多様化や食事への興味維持に有効です。
複数ペレット使用のメリットはこちらです。
- 栄養の偏りを防げる
- 食事に変化がつき飽きを防止できる
- 特定ブランドの製造中止リスクに対応できる
- 季節や体調に応じて調整しやすい
実際の使用例として、ハリソンペレットを基本(60~70%)として、ズプリームフルーツブレンドを少量(20~30%)混ぜる方法があります。また、通常時はアダルトライフタイム、換羽期はハイポテンシーに切り替えるなど、ライフステージに応じた使い分けも効果的です。
ただし、新しいペレットを追加する際は、急激な変更による消化不良を避けるため、少量から始めて徐々に比率を調整しましょう。1週間程度かけて新しいペレットの割合を10%、20%、30%と増やしていく方法が安全です。
よくある質問(FAQ)

インコペレットに関してよく寄せられる質問にお答えします。
これらの質問以外にも疑問がある場合は、販売店や獣医師に相談することをおすすめします。
インコペレットで愛鳥の健康を守ろう【総括】

インコペレットは科学的根拠に基づいて開発された総合栄養食であり、シードだけでは不足しがちなビタミンやミネラルを適切に配合しています。ペレット製法と押し出し製法の違いを理解し、鳥種や体質に合わせて選ぶことで、愛鳥の健康を長期的に守れます。
着色ペレットは嗜好性が高い反面、フンの色が変わるため健康チェックがしにくくなります。特に病気の既往歴がある鳥や老鳥には、無着色ペレットが推奨されます。一方、シードからの切り替え初期には着色ペレットが有効なので、段階的に無着色ペレットを混ぜていく方法が現実的です。
理想的な給餌方法は、ペレット70~80%とシード20~30%の併用です。ペレット100%にこだわりすぎず、愛鳥が喜んで食べる方法を優先しましょう。まずは愛鳥が食べてくれるペレットを見つけることが第一歩です。
複数のペレットを試し、将来的には2~3種類をローテーションすることで、栄養の偏りを防ぎ、飽きも防止できます。お試しサイズや小袋から始めて、愛鳥に最適なペレットを探してください。切り替えには時間がかかることもありますが、特にオカメインコは慎重な性格のため、2ヶ月から半年かかることも珍しくありません。
体重管理を徹底し、10%以上の体重減少が見られたら必ず元の食事に戻すことを忘れないでください。月額1,600~2,500円程度の餌代で、愛鳥の健康を長期的に守ることができます。焦らず、愛鳥のペースに合わせて、ゆっくりとペレット食にチャレンジしてみてください。
参考文献・出典
本記事は、以下の信頼できる情報源を参考に作成しました。正確性と信頼性を確保するため、公式情報、実体験、および専門家の知見を組み合わせています。
メーカー公式情報
- ハリソンバードフード公式サイト
- ズプリーム公式サイト
- ラウディブッシュ公式サイト
獣医学的知見
- 鳥類の栄養学に関する獣医学文献
- 鳥類専門獣医師による飼育環境アドバイス
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※本記事の情報は2025年11月時点のものです。製品仕様や価格は変更される可能性がありますので、購入前に各販売店の最新情報をご確認ください。
記事監修者情報
名前: 山木
経歴: フィンチ・インコ・オウム・家禽の飼育経験を持つ、飼い鳥歴30年以上の愛鳥家。オカメインコブリーダー。愛玩動物飼養管理士。当サイト「ハッピーインコライフ」はオカメインコとセキセイインコの飼い方をメインテーマとしています。科学的根拠と愛情に基づいた実体験を発信し、一羽でも多くのインコとその飼い主が幸せな毎日を送れるようサポートします。












































