なぜ切り替えが必要?シード食のリスクとペレットのメリット

「シードを喜んで食べているなら、そのままでいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、シード(種子)のみの食事は、人間の食事に例えると「ご飯と漬物だけ」の状態に近く、栄養バランスを保つのが非常に難しいのです。
シード食だけでは不足しがちな栄養素
シードは嗜好性が高く美味しいですが、ビタミン、ミネラル、カルシウムが不足しがちです。また、好きな種子だけを選んで食べる「選り好み」により、脂質過多になりやすい傾向があります。
シード食のリスク
- 肥満:高脂肪なシード(ヒマワリ、麻の実など)の食べ過ぎ
- カルシウム不足:卵詰まりや骨折のリスク上昇
- ビタミンA欠乏:呼吸器疾患や免疫力低下の原因に
- 寿命への影響:栄養の偏りが長期間続くと、内臓疾患のリスクが高まる
もちろん、シードにも「食べる楽しみ」や「殻を剥くストレス解消(フォージング)」という大きなメリットがあります。そのため、シードを完全にゼロにするのではなく、ペレットを主食(7割)にし、シードをおやつ(3割)にするのが理想的なバランスです。
詳しくはインコの食事黄金比の記事でも解説しています。
失敗しないための準備!切り替えの「三種の神器」

丸腰でペレット切り替えに挑むのは無謀です。成功率をグッと高めるために、以下の3つのアイテムを必ず準備してください。
最初のペレットは「味」と「香り」で選ぶ
普段シードを食べているインコにとって、味気ない色のペレットは「食べ物」として認識されにくいです。最初は「ズプリーム フルーツブレンド」のような、甘い香りがしてカラフルなものが導入用として最適です。
「着色料が気になる」という方もいるかもしれませんが、まずは「ペレットを口にする」というハードルを超えることが最優先です。慣れてから無着色のナチュラルタイプへ切り替えれば問題ありません。
命を守る「10%ルール」を知っておく
切り替え中に食事が減ると、体重が落ちることがあります。安全のために以下のルールを絶対守ってください。
体重減少の撤退ライン
「元気な時の体重から10%減ったら、即座に中止してシードに戻す」
- 例:セキセイインコ(35g)→ 31.5gでストップ
- 例:オカメインコ(90g)→ 81.0gでストップ
この判断をするために、毎朝の体重測定(デジタルスケール)は必須なのです。


【実践】絶対に焦らない切り替え5ステップ

ここからが本番です。以下のステップを、「1ステップにつき1週間~1ヶ月かける」くらいの気持ちで進めてください。決して焦ってはいけません。
ステップ1:粉末ペレットを「ふりかけ」にする
まずは「ペレットは食べ物だ」と認識させるのではなく、「いつものご飯からペレットの匂いがする」状態に慣れさせます。
- ミルでペレットをパウダー状にする。
- いつものシードの上に、ひとつまみだけ振りかける。
- 嫌がらなければ、少しずつ粉の量を増やす。
ステップ2:シードを湿らせて粉を「絡ませる」
粉を避けてシードだけ食べてしまう場合は、少し工夫が必要です。シードを極少量の水で湿らせてから粉末ペレットを混ぜると、シードの周りにペレットがコーティングされます。
これにより、シードを食べる時に必然的にペレットの味が口に入ります。※湿らせた餌は雑菌が繁殖しやすいので、夏場は1〜2時間、冬場でも3時間程度でさげてください。
ステップ3:「形のある」小粒ペレットを1割混ぜる
粉の味に抵抗がなくなったら、ミルで砕く時間を短くし、「粗挽き(粒が少し残る状態)」のペレットを混ぜてみます。
ここでもし食べるようなら、そのままの形のペレット(極小粒タイプ)を全体の1割ほど混ぜてみましょう。
成功率を上げる「朝イチ」の魔法
インコが一番お腹を空かせているのは「朝一番」です。このタイミングだけペレット(またはペレット多めのご飯)を与え、昼や夜にはシードを足してあげるという「時間差攻撃」も有効です。空腹なら、普段食べないものでも口にしてみようという気が起きやすくなります。
ステップ4:徐々にペレットの割合を増やす
ペレットを食べていることが確認できたら(フンの色がペレット色に変わるなどで判断)、少しずつ割合を変えていきます。
理想の進行ペース:
1週目:シード9:ペレット1
2週目:シード7:ペレット3
3週目:シード5:ペレット5
体重が減っていないか、デジタルスケールで毎日確認しながら進めてください。
ステップ5:主食ペレットの完成(シードはおやつへ)
最終的に「ペレット7割以上」を食べられるようになれば切り替え成功です!
残りの3割は、ご褒美やフォージング用としてシードを与えてあげてください。楽しみとしてのシードは、インコの心の健康に役立ちます。
よくある失敗パターンと対策

切り替えに失敗するケースのほとんどは、「飼い主さんの焦り」が原因です。
NG行動:いきなり100%ペレットにする
「お腹が空けば食べるだろう」という考えは大変危険です。インコは頑固な場合、餓死寸前までハンガーストライキをすることもあります。特に小型のインコは代謝が高く、1日の絶食でも命に関わります。絶対に「兵糧攻め」のような無理強いはしないでください。
換羽期や体調不良時は避ける
換羽(羽の生え変わり)の時期や、体調が悪い時は、ただでさえ体力を消耗しています。そんな時に慣れない食事への切り替えを行うと、ストレスでさらに体調を崩してしまいます。
切り替えは「インコが元気で、体重が安定している時」に行うのが鉄則です。
「食べてるふり」に要注意
シードの殻を剥くように、ペレットをクチバシで砕いて遊んでいるだけで、実際には飲み込んでいないことがあります。
これを防ぐために、毎朝の体重測定と、フンの確認(量や色が変化していないか)を必ず行ってください。
どうしても食べない時の「奥の手」

「粉末作戦もダメ、混ぜても器用に避ける…」そんな頑固な子には、アプローチを変えてみましょう。
飼い主が美味しそうに食べるフリをする
インコは群れで生活する生き物で、「仲間が食べているものは安全で美味しい」と判断する習性(共食行動)があります。
愛鳥の目の前で、飼い主さんがペレットをつまんで「うん!美味しい!」と食べるフリ(または実際に少し齧る)を見せてみてください。「大好きな飼い主さんが食べているなら…」と興味を持ってくれることがあります。
「おこし」形状のラフィーバーを試す
ペレットとおやつの中間のような存在、それが「ラフィーバー」です。シードとペレットを糖蜜で固めた「おこし」のような形状をしており、シード好きな子が夢中で齧ります。
これを食べてくれるなら、そこに含まれるペレットの味に慣れていくことができます。詳しくはラフィーバーの記事で解説しています。
バードブレッドを焼いてみる

ペレットを粉にして、パンケーキのように焼く「バードブレッド」も有効です。温かくてふわふわした食感を好むインコは多いです。
ペレットを食べるのが嫌なら、まずは「形を変えて」アプローチしてみましょう。レシピの詳細はバードブレッドのレシピ記事をご覧ください。
切り替えにおすすめの「導入用」ペレット

最後に、切り替えの第一歩としておすすめのペレットを紹介します。まずは「食べてくれること」を最優先に選びましょう。

どのペレットが合うかは、正直なところ「試してみないと分からない」のが現実です。最初は少量パックやお試しセットを活用するのも賢い方法です。
よくある質問|ペレットへの切り替え
根気が最大の近道!ペレット切り替えで健康な未来を【総括】

シードからペレットへの切り替えは、飼い主さんとインコの根気比べです。「せっかく買ったのに食べてくれない」と落ち込む日もあるでしょう。しかし、焦らず「粉末作戦」から始めて、少しずつ味に慣れさせていくことが、遠回りのようで一番の近道です。
栄養バランスの整ったペレットを主食にすることは、愛鳥の肥満を防ぎ、内臓への負担を減らし、健康寿命を延ばすための大きな投資になります。シードは「楽しみ」として残しつつ、主食をペレットに切り替えることで、愛鳥との幸せな時間を1日でも長く守ってあげてください。
どうしても食べない時は、ラフィーバーやバードブレッドなどの便利なアイテムも頼りながら、あなたのペースで進めていきましょう。今日の一歩が、10年後の元気な姿に繋がっています。





















































