ハリソンマッシュとは?粉末だからできる「攻め」と「守り」の栄養管理

ハリソンマッシュは、世界最高峰のオーガニックペレット「ハリソン」を極微細なパウダー状にした製品です。通常の「粒」では食べられなかったり、消化できなかったりする鳥にとって、まさに救世主とも言える存在です。
なぜ家に常備すべきなのか?「安心を買う」という意味
愛鳥家がマッシュを常備すべき最大の理由は、「緊急時の対応力」にあります。
- 急な体調不良で固形物が食べられない時の「流動食」になる
- 薬を飲ませる時の「投薬補助」として使える
- 老鳥になって噛む力が弱くなった時の「介護食」になる
病気になってから慌てて注文しても、届くまでに数日かかってしまいます。その数日が命取りになることもあります。元気なうちからマッシュを準備し、味に慣れさせておくことは、愛鳥のための「食べる保険」に加入するようなものです。
【ハイポテンシー vs アダルトライフタイム】目的別・失敗しない選び方

マッシュ選びで失敗しないためには、「今の愛鳥の状態」に合わせて2つのタイプを使い分ける必要があります。間違った方を選ぶと、栄養不足になったり、逆に肥満になったりするリスクがあります。
2つのマッシュの決定的な違い
| 項目 | ハイポテンシーマッシュ (HPM) | アダルトライフタイムマッシュ (ALM) |
|---|---|---|
| 役割 | 【高栄養・療養食】 エネルギーチャージ |
【常用食・維持食】 健康キープ |
| 推奨シーン | ・幼鳥のさし餌/一人餌移行 ・換羽期 ・病中病後の看護 ・シードからの切り替え初期(6ヶ月間) |
・健康な成鳥の主食 ・肥満気味の鳥 ・HPM期間終了後の維持 |
| 脂質 | 14%(高カロリー) | 6.5%(ヘルシー) |
ハイポテンシーマッシュ(高栄養タイプ)
初めてハリソンを買うなら、まずはこれ一択です。シード食で不足しがちな栄養を一気に補い、体をリセットするための「栄養療法」として、最低6ヶ月間はこれを使います。また、万が一の看護食としてストックするのもこちらがおすすめです。

アダルトライフタイムマッシュ(維持タイプ)
ハイポテンシーを6ヶ月続けて体が整った後や、健康な成鳥の常用食として使います。低脂肪なので、一生食べ続けても肥満になりにくい設計です。粉末派の愛鳥の「毎日のごはん」ならこちらです。

「ふやかす」だけじゃない!食いつきが変わる3つの与え方

「マッシュ=お湯で溶く」と思い込んでいませんか?実は、乾燥したまま使う方が管理も楽で、鳥も喜ぶことが多いのです。状況に合わせた「味変」テクニックを紹介します。
1. 魔法の粉として「振りかける」(切り替え最強テク)
シードしか食べない子には、いつものシードにマッシュをまぶして与えます。
- シードを少しだけ水で湿らせると、マッシュが表面にコーティングされる
- シードの殻を剥くときに、口の中にマッシュが入る
- 「これは食べ物だ」と無意識に学習させることができる
粒タイプのペレットは避けて食べられますが、粉末のマッシュは「避けようがない」ため、偏食の子でも確実に栄養を摂取できます。
2. そのまま「粉食」として与える(文鳥・キンカチョウにも)
くちばしの力が弱い文鳥やキンカチョウ、カナリアなどのフィンチ類にとって、硬いペレットを砕くのは重労働です。
マッシュなら最初からパウダー状なので、小さな鳥でもストレスなく食べられます。塩土を突くような感覚で、そのまま餌入れに入れてみてください。
3. 水分を加えて「団子」や「ペースト」に
老鳥や幼鳥には、食べやすい硬さに調整してあげましょう。
- 団子状: 手で持って食べたい子に。コミュニケーションにも最適。
- ペースト状: 消化能力が落ちている時や、強制給餌が必要な時に。
水分を加えた時の注意点
水を加えたマッシュは非常に傷みやすいです。特に夏場は、作ってから30分~1時間以内に下げてください。衛生管理は徹底しましょう。
【保存版】看護・介護・投薬に使える「マッシュ活用レシピ」

ここでは、マッシュを持っている人だけができる、緊急時や特別なケアのためのレシピを紹介します。これを覚えておけば、いざという時に慌てずに済みます。
1. 命をつなぐ「高栄養流動食」
食欲がなく、固形物を食べられない時のレシピです。ハイポテンシーマッシュを使います。
【作り方の目安】マッシュ 1 : お湯 3
- 50℃くらいのお湯を用意する。
- マッシュにお湯を少しずつ加え、ポタージュ状になるまで溶く。
- 人肌(40℃前後)まで冷ましてから、スプーンやシリンジで与える。
※お湯の量は鳥の状態に合わせて調整してください。ドロドロが飲み込めない場合は、さらに薄めて上澄みを与えます。
※強制給餌は誤嚥(気管に入ること)のリスクがあるため、初めての場合は獣医師の指導を受けてから行ってください。
2. 苦い薬もへっちゃら「投薬団子」
飲み水に薬を混ぜても飲んでくれない…そんな時の裏技です。
- 1回分の粉薬を、少量のマッシュと混ぜ合わせる。
- ほんの少し水を垂らし、小さな団子を作る。
- 「おやつだよ」といって手渡しで食べさせる。
マッシュの香ばしい風味が薬の苦味をカバーしてくれるため、ストレスなく投薬できます。
3. 野菜嫌いを克服「ベジタブル・ダスティング」
野菜を食べない子には、細かく刻んだ野菜にマッシュをまぶしてみてください。「マッシュの味がする!美味しい!」と勘違いして、野菜ごと食べてくれることがあります。
マッシュすら食べない!そんな時の「最終手段」

「粉末にしても食べてくれない…」と諦めるのはまだ早いです。鳥は「見慣れないもの」を警戒しているだけかもしれません。
遊びながら食べる「フォージング」活用術

「餌入れに入っていると食べないけど、落ちているものは食べる」というインコの習性を利用します。
- お皿や紙の上にマッシュを薄く広げ、その中に大好きなおやつ(シード数粒)を隠す
- おやつを探す過程で、くちばしにマッシュが付き、味を覚える
遊び感覚で警戒心を解くことが、意外な近道になることがあります。
飼い主が「食べるフリ」をする
群れで暮らすインコは、仲間(あなた)が食べているものに興味を持ちます。マッシュを指につけて、あなたが美味しそうに食べるフリを見せてください。「ん~!おいしい!」と大げさに演技するのがコツです。
100%果汁ジュースで練る
水ではなく、リンゴジュースやオレンジジュース(砂糖不使用の100%のもの)でマッシュを練ってみてください。フルーティーな香りと甘みで、頑固な子も口を開けてくれる確率がグンと上がります。ただし、フルーツのに慣れてしまうと、後々の切り替えが難しくなる可能性もあるので、最終手段として考えましょう。
よくある質問|マッシュの疑問を解消
Q1. マッシュとスーパーファイン、どっちが良いの?
A1. 最終目標は「スーパーファイン(粒)」ですが、入り口は「マッシュ」が楽です。
粒タイプのペレットは、噛んで食べる満足感があり、くちばしの伸びすぎ防止にも役立ちます。理想はマッシュで味に慣れてから、徐々に粒タイプのスーパーファインへ移行することです。しかし、どうしても粒を食べない場合は、生涯マッシュを与え続けても栄養面での問題は全くありません。
Q2. 開封後はどのくらい持ちますか?
A2. 開封後は「8週間以内」に使い切ってください。
ハリソンは保存料不使用のオーガニックフードです。粉末状のマッシュは空気に触れる面積が大きいため、特に酸化しやすいです。開封後は空気を抜いて密閉し、乾燥剤(シリカゲル)を入れて冷蔵庫(野菜室)で保管することをおすすめします。長期保存したい場合は、小分けにして冷凍保存も可能です。詳しいペレットの保存方法については別記事で解説しています。
Q3. マッシュを与える量はどのくらい?
A3. 1日あたり体重の約10%が目安です。
セキセイインコ(30g)なら約3g、オカメインコ(90g)なら約9gです。ただし粉末は飛び散りやすいため、少し多めに入れてあげると良いでしょう。毎日体重を測り、減りすぎていないか確認しながら調整してください。
【総括】マッシュは「愛鳥のお守り」として常備しよう

ハリソンマッシュは、単なる餌のバリエーションの一つではありません。シード食からのスムーズな移行を助け、病気や老いといった「もしも」の時に愛鳥の命を支える重要なアイテムです。
特に「ハイポテンシーマッシュ」を一袋ストックしておくことで、急な食欲不振や体調不良の際、すぐに高栄養の流動食を作ってあげることができます。この「準備がある」という安心感は、飼い主にとっても大きな心の支えになるはずです。














