日本の冬はインコにとって「極寒の地」です

「インコは寒さに強い」という話を耳にすることがありますが、これは大きな誤解であり、鵜呑みにするのは危険です。
確かに野生のセキセイインコやオカメインコは、オーストラリアの乾燥地帯で寒暖差のある環境に生息しています。しかし、私たちが飼っているインコは、何代にもわたって温室のような快適な環境で繁殖されてきた「箱入り」です。
野生のような耐寒性は失われており、日本の湿った底冷えする冬は、彼らにとって命に関わる過酷な環境なのです。
寒さが招くリスク
- 低体温症:体温維持にエネルギーを使い果たし、動けなくなる
- 免疫力低下:風邪や感染症にかかりやすくなる
- 消化不良:内臓機能が低下し、食べたものを消化できなくなる
「保温なしで冬を越せた」という声もありますが、それはたまたま運が良かったか、インコが必死に耐えて寿命を削っていただけかもしれません。保温は「過保護」ではなく、飼い主としての「最低限の義務」と考えましょう。
【保存版】年齢別インコの適温リスト

インコの適温は、種類だけでなく「年齢」や「健康状態」によって大きく異なります。あなたの愛鳥がどのステージにいるかを確認し、適切な温度を維持してあげましょう。
セキセイインコ・オカメインコの適温表
基本的には、セキセイインコもオカメインコも適温範囲はほぼ同じです。特に幼鳥(1歳未満)や老鳥(7歳以上)は、健康な成鳥よりも高い温度が必要になります。
これらはあくまで目安です。温度計の数値だけでなく、「羽を膨らませていないか」「片足をお腹にしまっていないか」など、愛鳥の様子を見て調整することが最も重要です。
命を守る「3種の神器」|これだけ揃えれば安心です

冬の寒さからインコを守るためには、以下の3つのアイテムが必須です。これらは「あったら便利」なものではなく、「ないと命に関わる」必須装備と考えてください。
1. ペットヒーター(熱源)
まずは部屋全体を暖房で温めるのが基本ですが、それだけでは夜間や真冬の冷え込みに対応できません。ケージ専用のヒーターが必要です。
ヒーターには大きく分けて「保温電球タイプ(アサヒなど)」と「パネルヒータータイプ(マイカなど)」があります。
どっちを選べばいい?
室温が10℃を下回る寒い部屋なら「保温電球」一択です。比較的暖かい部屋や、安全性を最優先したい場合は「パネルヒーター」がおすすめです。
\ あなたに合うヒーターはどっち? /
2. サーモスタット(温度制御)
ヒーターを買ったら、セットで必ず買わなければならないのが「サーモスタット」です。これは、設定した温度になったら自動でヒーターの電源をOFFにし、下がったらONにしてくれる装置です。
これがないと、春先の暖かい日や、暖房が効いた部屋でケージ内がサウナ状態になり、熱中症で亡くなってしまう事故が後を絶ちません。ヒーター直結は絶対にやめましょう。
センサーの設置場所に注意!
サーモスタットのセンサーは、ヒーターの真上や直近には設置しないでください。ヒーターの熱を直接感知してすぐに電源が切れてしまい、ケージ全体が温まらない原因になります。「インコが普段いる止まり木の近く」で「ヒーターから少し離れた場所」がベストです。
\ ヒーターとセットで必須! /
3. アクリルケース(保温・防音)
ヒーターで温めた空気を逃がさないための「囲い」です。タオルや布カバーでは熱が隙間から逃げてしまいますが、アクリルケースなら密閉性が高く、電気代の節約にもなります。
ビニールカバーでも代用できますが、ボロボロになりやすく、誤飲や酸欠のリスクがあります。予算が許すなら、安全性と美観に優れたアクリルケースが最強の選択肢です。
\ 防音効果で呼び鳴き対策にも /
「節約術」が招く悲劇|段ボールやカイロが危険な理由

インコの飼育において、「お金をかけずに温めたい」という考えは非常に危険です。ネット上には様々な節約術がありますが、それらには致命的なリスクがあります。
- 段ボールで囲う:保温性が低く、隙間風が入ります。また、ケージ内が真っ暗になり、インコに精神的なストレスを与えます。
- 使い捨てカイロ:酸素を消費して発熱するため、密閉された空間で使うと酸欠死する恐れがあります。温度調整もできません。
- 湯たんぽ・ペットボトル:お湯が冷めるにつれて室温も下がるため、一番寒い明け方に保温効果が切れてしまいます。
インコの治療費は高額です。寒さで体調を崩して病院に通うことになれば、ヒーター代の何倍もの費用がかかります。最初から専用の器具にお金をかけることが、結果的に一番の節約になり、何より愛鳥の命を守ることにつながります。
よくある質問【FAQ】

3種の神器を揃えて、冬を安全に乗り切ろう【総括】

日本の冬は、南国生まれのインコたちにとって命がけの季節です。「少しくらい寒くても大丈夫だろう」という油断が、取り返しのつかない悲劇を招くこともあります。
しかし、正しい道具さえ揃えてしまえば、恐れることはありません。「専用ヒーター」で温め、「サーモスタット」で管理し、「アクリルケース」で熱を逃がさない。この3つの装備があれば、あなたの愛鳥は冬でもポカポカと快適に過ごせます。
初期費用は少しかかるかもしれませんが、それは愛鳥の健康と、あなた自身の安心感への投資です。本格的な冬が来る前に、しっかりと準備を整えてあげてくださいね。
