呼び鳴きの正体は「愛」?無視が虐待になりうる理由

「インコが呼び鳴きをするのは、飼い主をナメているからだ」「徹底的に無視すれば直る」…そんなアドバイスをネットで見かけたことはありませんか?しかし、その真面目な実行が、実はインコにとって虐待に近い苦しみを与えている可能性があります。
群れで生きるインコにとって「無視」は死の恐怖

野生のインコは、巨大な群れを作って生活しています。彼らにとって、仲間の姿が見えなくなった時に「ここにいるよ!」「どこにいるの?」と鳴き交わす(コンタクトコール)のは、生存のために欠かせない本能行動です。
- 呼び鳴きは「わがまま」ではなく「確認作業」
- 飼い主=群れの仲間 と認識しているからこそ呼ぶ
- 無視される=群れから見捨てられた という絶望感
人間にとっては「ちょっとしたしつけ」のつもりでも、インコにとっては「仲間に存在を否定される」という強いストレスになります。
体験談:無視し続けて「心を閉ざした」ピー太郎の話
実際に、「呼び鳴きは徹底的に無視」という対策を実践して失敗した飼い主さんの事例を紹介します。
ある飼い主さんの後悔
「呼び鳴きがうるさくて、心を鬼にして無視を続けました。1ヶ月ほど経つと、確かに呼び鳴きは減ったんです。でも、それと同時にピー太郎は元気をなくし、ご飯もあまり食べなくなり、羽もボロボロに…。私が名前を呼んでも、以前のように嬉しそうに近寄って来なくなってしまいました。」
これは心理学でいう「学習性無力感」の状態です。「何をしても無駄だ」と悟り、諦めてしまったのです。呼び鳴きは止まりましたが、愛鳥との信頼関係は崩れてしまいました。これが本当に求めていた「解決」でしょうか?
【重要】それは本当に「呼び鳴き」ですか?
対策を始める前に、ひとつだけ確認してください。インコが鳴いているのは、本当に「構ってほしいから」だけでしょうか?もし生理的な苦痛を訴えているのであれば、防音して無視することは命に関わります。
⚠️ 3つのSOSチェックリスト
- 空腹・喉の渇き: 餌箱や水入れは空になっていませんか?
- 寒さ・暑さ: 適温から外れていませんか?羽を膨らませたり、ワキワキしていませんか?
- 恐怖・パニック: 窓の外にカラスや野良猫がいませんか?(オカメパニック等)
これらの基本的なお世話(生理的欲求)が満たされている状態でのみ、以下の防音対策へ進んでください。オカメインコのパニック対策については、オカメパニック対策はケージが9割!流血を防ぐ「横網・広さ」の黄金ルールで詳しく解説しています。
「しつけ」より「環境」を変えるべき3つの理由
インコの本能である呼び鳴きを、しつけだけで完全にコントロールするのは至難の業です。それよりも、「鳴いても気にならない環境」を作る方が、圧倒的に早く、確実で、お互いに幸せになれます。
飼い主の罪悪感とイライラが消える
防音対策の最大のメリットは、実は「飼い主のメンタルケア」にあります。「近所迷惑にならないか」という不安が消えれば、インコが鳴いても「元気だね」と笑って許せるようになります。
- 「うるさい!」と怒鳴らなくて済む
- 無視する罪悪感から解放される
- インコへの愛情を取り戻せる
インコも思い切り鳴いてストレス発散できる
インコにとって、大声で鳴くことはストレス発散であり、健康のバロメーターでもあります。「鳴いてはいけない」と抑圧するのではなく、「鳴いてもいい場所」を提供してあげるのが、真の動物愛護と言えるでしょう。
防音環境さえ整っていれば、朝の呼び鳴きも、興奮した時のギャギャ鳴きも、防音ケースの中で自由にさせてあげられます。インコは本能を満たせ、飼い主は静寂を手に入れられる。これこそが「Win-Win」の関係です。
呼び鳴きは90dB!防音なしでは「地下鉄の車内」と同じ

そもそも、インコの呼び鳴きはどれくらいの音量なのでしょうか?「可愛い声」というイメージがありますが、数値で見ると驚愕の事実がわかります。
【実測】スマホアプリで測ってみた騒音レベル
実際に騒音計アプリを使って、セキセイインコとオカメインコの呼び鳴きを計測してみました。
なんと、本気の呼び鳴きは地下鉄の車内や犬の吠え声に匹敵する「騒音」なのです。これを何の対策もせずにアパートやマンションで放置するのは、近隣トラブルの時限爆弾を抱えているようなものです。
窓の隙間から「高音」はダダ漏れしている
特に注意が必要なのが「窓」です。インコの鳴き声のような「高音(高周波)」は、直進性が強く、わずかな隙間からでも外へ突き抜けていきます。
「うちはカーテン閉めてるから大丈夫」と思っていませんか?市販の防音カーテンでも、インコの甲高い鳴き声に対する効果は-10dB〜-15dB程度が限界です。サッシの隙間やカーテンの隙間から、あなたの愛鳥の叫び声はご近所に丸聞こえになっている可能性が高いのです。マンションでの防音対策については、マンションのインコがうるさい|騒音の原因は「窓」の隙間!賃貸でできる鉄壁防音術で具体的な対策を解説しています。
防音対策で「無視しなくていい」環境を作る

では、具体的にどうすればいいのでしょうか?答えはシンプルです。物理的に音を遮断するのです。防音対策をすれば、インコが鳴いても外には聞こえません。つまり、飼い主は焦って黙らせる必要がなくなり、「無視」という辛い選択をする必要もなくなります。
アクリルケースで「-30dB」の静寂を手に入れる
最も効果的で推奨されるのが、鳥かご専用の「アクリルケース」です。これはケージ全体を厚みのあるアクリル板で覆うもので、防音・保温・脂粉対策の3役をこなす神アイテムです。
- 防音効果: 5mm厚のアクリルケースなら、約20〜30dBの減音効果があります。
- 体感の変化: 「地下鉄の車内(90dB)」が「普通の会話(60dB)」レベルまで下がります。テレビの音が普通に聞こえるようになります。
- 心理的余裕: 「隣に聞こえてるかも」という恐怖がなくなり、心に余裕が生まれます。
「高いから…」と躊躇する方もいますが、近隣トラブルで引越しを余儀なくされるコストや、日々のストレスを考えれば、決して高い買い物ではありません。アクリルケースの選び方については、鳥かごアクリルケースおすすめ4社比較!防音・保温・サイズの選び方完全ガイドで詳しく比較しています。
0円でできる!ケージを壁から離すだけで音は変わる
アクリルケースの前に、今すぐできる対策もあります。それは「配置」を変えることです。
ケージを隣の部屋との境の壁にぴったりつけていませんか?壁は振動を伝えて音を隣室に響かせてしまいます。ケージを壁から10〜20cm、できれば1m離すだけでも、隣家に伝わる音は大幅に軽減されます。窓際から離すのも効果的です。防音グッズの効果については、【実測】インコの防音グッズランキング!カーテンとアクリルケースの数値差で実測データを公開しています。
おもちゃとフォージングで「ひとり遊び」の達人に

防音環境を整えたら、次はインコ自身の「暇つぶしスキル」を上げてあげましょう。呼び鳴きの原因の一つは「退屈」です。飼い主がいなくても夢中になれるものがあれば、呼び鳴きは自然と減っていきます。
フォージング(採餌行動)で本能を満たす

野生のインコは、1日の大半を餌探しに費やしています。しかし飼育下では、餌箱にいつでもご飯が入っていて、あっという間に食事が終わってしまいます。この「余った時間」と「余ったエネルギー」が、呼び鳴きに向かってしまうのです。
そこでおすすめなのが「フォージング」です。餌を少し探しにくくする工夫のことで、知的好奇心を満たし、退屈を解消します。
- 初心者向け: 餌箱の上に紙を被せて、破らないと食べられないようにする。
- 中級者向け: フォージング専用のおもちゃ(転がすとシードが出るボールなど)を使う。
- 効果: 「どうやって食べよう?」と頭を使うことで、心地よい疲労感を得られ、無駄鳴きが減ります。
病院のセキセイインコ、らおうちゃんのフォージング挑戦動画です。難易度が大分上がってますが、難なくクリア! pic.twitter.com/PhsjPIkUIF
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) May 28, 2020
らおうちゃんのフォージングチャレンジ。このフォージングトイも難なくクリアしました!https://t.co/oX1kKYSduh pic.twitter.com/ntP1TMtvQ1
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) November 13, 2020
かじれるおもちゃでストレス発散

インコは「かじる」ことが大好きです。コルクやバルサ材、い草など、破壊できるおもちゃを与えると、夢中になってボロボロになるまで遊び続けます。
「飼い主を呼ぶ」ことよりも「このおもちゃを壊す」ことに集中させれば、呼び鳴きは驚くほど静かになります。防音ケースの中でおもちゃと格闘している愛鳥の姿は、とても楽しそうで微笑ましいものです。おもちゃについては、インコのおもちゃは家にあるもので手作り!簡単フォージングのすすめも参考にしてください。
実際の成功事例と飼い主の声

実際に、精神論(しつけ)から物理対策(防音+おもちゃ)へ切り替えて、呼び鳴き問題を解決した飼い主さんの声をご紹介します。
Aさん(セキセイインコ1羽飼い・アパート)
「以前は少しでも鳴くと『静かに!』とビクビクしていましたが、アクリルケースを買ってからは『元気だね〜』と思えるようになりました。フォージングトイも導入したら、私が部屋を出てもおもちゃに夢中で、呼び鳴きが激減。もっと早くこうすればよかったです。」
Bさん(オカメインコ1羽飼い・マンション)
「呼び鳴きの声が大きすぎてノイローゼ気味でしたが、防音ケース+吸音材で対策。完全に無音にはなりませんが、隣の部屋に行けば気にならないレベルになりました。私がリラックスしたせいか、インコも落ち着きを取り戻しました。」
飼い主の心の余裕は、必ずインコにも伝わります。「防音」は、インコを閉じ込めるためではなく、インコと飼い主が共存するための「愛の結界」なのです。
よくある質問|呼び鳴きと防音対策
呼び鳴き対策や防音について、飼い主さんが抱えがちな疑問にお答えします。
Q1. 呼び鳴きを無視し続けるとどうなりますか?
A1. 「学習性無力感」に陥り、心を閉ざす可能性があります。
「何をしても無駄だ」と学習し、呼び鳴きは止まるかもしれませんが、同時に食欲不振や毛引き、飼い主への無関心など、うつ状態のような症状が出ることがあります。インコにとって「群れからの無視」は最大の罰です。無視よりも、環境を変えて「鳴いてもいい状況」を作ることを強くおすすめします。
Q2. アクリルケースに入れると可哀想ではないですか?
A2. むしろ快適な環境になります。
透明なので視界は遮られませんし、冬は保温効果が高く、夏は冷房の直風を防げます。何より「防音されているから怒られない」という環境は、インコにとってもストレスフリーです。ただし、換気には十分注意し、定期的に放鳥してコミュニケーションをとることは忘れないでください。アクリルケースの安全性については、インコのアクリルケースは酸欠になる?3つの危険リスクと「空気を見える化」する最新安全対策で詳しく解説しています。
Q3. 賃貸アパートでもできる防音対策はありますか?
A3. アクリルケースの導入と、窓の対策が有効です。
壁や床を工事できない賃貸では、音の発生源(ケージ)をアクリルケースで覆うのが最も効果的です。さらに、音漏れの主な原因である「窓」に、貼って剥がせるタイプの隙間テープを貼ったり、防音ボードを立てかけるなどの対策を組み合わせると、劇的に静かになります。防音の自作については、インコの防音対策を自作して後悔した話|ダンボールの火災リスクと「音漏れ」の現実もぜひご覧ください。
防音環境は「愛」!ストレスフリーな関係を築こう【総括】

インコの呼び鳴きは、飼い主を慕う愛情の裏返しであり、群れで生きる彼らの生存本能です。だからこそ、無理やり黙らせる「しつけ」や、心を傷つける「無視」は解決策になりません。
大切なのは、インコを変えるのではなく、環境を変えることです。アクリルケースなどの防音対策を導入すれば、90dBの呼び鳴きも気にならないレベルまで軽減できます。飼い主のイライラが消えれば、インコへの接し方も優しくなり、インコも安心して落ち着く…というプラスの連鎖が生まれます。
また、フォージングやおもちゃを活用して「退屈」を解消してあげることも重要です。ひとりで遊ぶ楽しさを知れば、過度な呼び鳴きは自然と減っていきます。
「防音」は、愛鳥を守り、あなた自身の生活を守るための前向きな選択です。ぜひ物理的な対策を取り入れて、インコも人間もストレスフリーな幸せな毎日を手に入れてください。
