インコの止まり木が健康を左右する理由

止まり木はインコの足裏の健康、爪の摩耗、筋力維持に直結する重要アイテムです。不適切な止まり木は趾瘤症(バンブルフット)や関節疾患を引き起こし、インコの生活の質を大きく低下させます。一日の70~80%を止まり木で過ごすインコにとって、止まり木は人間の「床」と同じ重要性を持っています。
止まり木はインコの「床」である
インコは一日の大半を止まり木の上で過ごします。野生では木の枝を渡り歩きながら採餌し、高い枝の上で眠り、仲間とコミュニケーションをとります。飼育下でも同様に、止まり木はインコの生活の中心です。
インコが一日に止まり木で過ごす時間は、平均して18~20時間にもなります。食事中も、水を飲む時も、羽づくろいをする時も、インコは止まり木に止まっています。夜間の睡眠時には12時間以上、同じ止まり木に片足を上げて眠り続けます。
この長時間にわたって、インコの全体重が足裏にかかり続けます。人間が一日中立ちっぱなしでいると足が痛くなるように、インコも不適切な止まり木では足に負担がかかります。しかし人間と違い、インコは「足が痛い」と訴えることができません。
止まり木の素材や太さが不適切だと、足裏の同じ部分に持続的な圧力がかかり、血行不良や皮膚損傷を引き起こします。これが趾瘤症(バンブルフット)という難治性の疾患につながるのです。
止まり木選びは、インコの健康を左右する最も重要な飼育用品の選択といえます。ケージ全体の環境づくりについては、オカメインコのケージ環境完全ガイドで総合的に解説しています。
不適切な止まり木が引き起こす健康問題
不適切な止まり木を使い続けると、インコには様々な健康問題が発生します。最も深刻なのは趾瘤症(バンブルフット)ですが、それ以外にも多くのトラブルが起こりえます。
趾瘤症(バンブルフット)は、足裏に炎症や潰瘍が生じる疾患です。初期は足裏が赤くなる程度ですが、進行すると皮膚がただれて潰瘍化し、細菌感染で膿が溜まり大きく腫れ上がります。感染が深部の腱や骨に達すると、治療が非常に困難になります。
鳥専門獣医師の海老沢和荘氏は、以下のように指摘しています。
「餌箱の縁などにずっととまっていると趾瘤症になることがあります。この場合は餌箱の変更と共に止まり木も工夫をすると足の改善に役立ちます。ニームパーチは趾瘤症治療や予防の他、齧ることによるエンリッチメントにも繋がります。また既存の止まり木に保護テープを巻くのも趾瘤症改善に有効です。」
血行不良と足の冷えも深刻な問題です。均一な太さの止まり木を使い続けると、足裏の同じ部分に常に圧力がかかり、血流が滞ります。特に冬場は足先が冷えやすくなり、インコが片足を羽毛に入れて温める時間が長くなります。
関節の変形と歩行困難も見られます。長期間にわたって不自然な握り方を強いられると、足指の関節が変形し、正常に握れなくなることがあります。老鳥になるとこの症状が顕著になり、止まり木から落ちやすくなります。
ストレスと問題行動の原因にもなります。足が痛いインコは落ち着きがなくなり、止まり木を頻繁に移動したり、ケージの底で過ごす時間が増えたりします。慢性的な不快感は毛引き症などの問題行動を誘発することもあります。
バンブルフット対策では、趾瘤症の詳しい症状、治療法、予防法、保護テープの使い方を解説しています。
獣医師が警告する「ケージ付属の止まり木」の問題点

ペットショップで販売されているケージに最初から付属している止まり木の多くは、インコの足の健康という観点では問題があります。見た目はきれいで設置も簡単ですが、長期使用には適していません。
均一な太さによる圧力集中が最大の問題です。付属の止まり木は工場で大量生産されるため、直径が完全に均一な円柱形をしています。インコがどこに止まっても、足裏の同じ部分に体重がかかり続けます。これは人間が毎日同じ靴で同じ姿勢を保ち続けるようなもので、特定の筋肉や関節に負担が集中します。
プラスチック素材の滑りやすさも危険です。多くの付属止まり木はプラスチック製で、表面がツルツルしています。インコが飛び乗った時や、羽づくろいで体勢を変える時に滑りやすく、落下事故の原因になります。特にオカメインコは夜間にオカメパニックを起こしやすいため、滑りやすい止まり木は危険です。
爪の自然な摩耗ができないことも問題です。プラスチックの止まり木では、インコの爪が全く摩耗しません。そのため、定期的な爪切りが必要になります。爪切りはインコにとってストレスであり、飼い主にとっても神経を使う作業です。
鳥類専門の獣医師は「本来、適切な止まり木環境を整えれば、爪切りは一生必要ない」と述べています。野生のインコは爪切りなしで健康に暮らしていますが、それは様々な太さ・硬さの枝を使い分けているからです。
ケージを購入したら、付属の止まり木はすぐに自然木に交換することをおすすめします。コストを抑えたい場合でも、最低限、睡眠用の止まり木だけは自然木に変更しましょう。夜間の長時間にわたって体重がかかる止まり木こそ、最も重要だからです。
老鳥の場合は特別な配慮が必要です。オカメインコの老鳥ケージ完全ガイドでは、握力が弱くなった老鳥に最適な止まり木の選び方を解説しています。
止まり木の素材別メリット・デメリット徹底比較

止まり木の素材は自然木、プラスチック、ロープ、爪とぎ系の4種類に大別されます。それぞれにメリット・デメリットがありますが、インコの健康を第一に考えた素材選びが重要です。結論から言えば、自然木が最も推奨され、爪とぎ系止まり木は使用厳禁です。
自然木止まり木【最もおすすめ】

自然木の止まり木は、インコの足の健康を守るために最も効果的な選択肢です。野生のインコが木の枝で暮らしているのと同じ環境を、飼育下でも再現できます。
不均一な太さで足裏への刺激が変化することが最大の特徴です。自然の木の枝は、一本の中でも根元は太く、先端は細くなっています。さらに、小枝が出ていた跡や樹皮の凹凸により、表面も不規則です。インコが止まる位置を変えるたびに、足裏に触れる部分が変わり、様々な筋肉が刺激されます。
樹皮の適度な粗さで爪が自然摩耗します。滑らかすぎず、粗すぎない樹皮の表面は、インコが握って移動するたびに爪先を適度に削ります。研磨剤のように足裏を傷つけることはなく、爪だけが自然に摩耗します。これにより、爪切りの頻度を大幅に減らせます。
かじってストレス解消できることも重要なメリットです。インコは本能的に木をかじる習性があり、樹皮をむいたり木の繊維を削ったりして遊びます。この行動はくちばしの自然な摩耗を促進し、探索欲求を満たし、ストレスを発散します。毛引き症などの問題行動の予防にもつながります。
樹種による特性の違いを活かせます。
- ニーム(インドセンダン):天然の抗菌・防虫成分を含み、消臭効果が高い。適度な硬さで長持ちする。
- ジャワウッド:超硬質で耐久性抜群。かじり癖が強い中型インコでも数ヶ月~1年以上持つ。複雑な枝ぶりでアスレチック要素も。
- 果樹(リンゴ、キウイ、ナシなど):柔らかめでかじりやすい。インコが夢中でかじって遊ぶ。消耗は早いが、遊び要素が高い。
- ケヤキ、クヌギ、シラカバ:日本で入手しやすい木材。硬さも適度で、自作止まり木に最適。
自然木の詳しい商品情報や選び方については、インコの自然木止まり木おすすめ7選で、ニームパーチ、ジャワウッド、Y字型、フラットパーチなど7商品を徹底比較しています。
プラスチック止まり木【おすすめしない】
プラスチック製の止まり木は、ケージに付属していることが多く、入手しやすいため使用している飼い主さんも多いですが、長期使用には適していません。
メリットは限定的です。掃除が簡単で水洗いできること、価格が安いこと、カラフルな色で見た目が華やかなことが挙げられます。また、カビが生えないため衛生管理は楽です。
デメリットは深刻です。
- 滑りやすく、インコが飛び乗った時や羽づくろいで体勢を変える時に足が滑り、落下事故の原因になる。
- 均一な太さで足裏の同じ部分に常に圧力がかかり、血行不良や趾瘤症のリスクが高まる。
- 爪が伸びるため定期的な爪切りが必要になり、インコにストレスを与える。
- 足裏に負担がかかり、長時間止まっていると足が痛くなる。
プラスチック止まり木は、一時的な使用(キャリーケース内や病鳥の短期隔離ケージなど)に留め、メインの止まり木としては使用しないことを強くおすすめします。
ロープパーチ【補助的に使用可】

ロープパーチ(ロープ止まり木)は、綿や麻などの繊維でできた柔らかい止まり木です。老鳥や足の弱いインコに適していますが、使用には注意が必要です。
足裏が柔らかく疲れにくいことが最大のメリットです。ロープの繊維が足裏にフィットし、硬い止まり木に比べて圧力が分散されます。握力が弱くなった老鳥でも安定して止まれます。
定期的な交換が必要です。ロープはインコがかじると繊維がほつれ、足指が絡まる事故の危険があります。ほつれを発見したらすぐに交換しましょう。また、フンや水分を吸収しやすいため、こまめな洗濯か交換が必要です。
老鳥や足に問題がある個体には特におすすめです。関節炎やバンブルフットで足裏が痛い子、握力が低下した高齢の子には、ロープパーチを1本追加することで生活の質が向上します。
ロープパーチは補助的な使用に留め、ケージ内の全ての止まり木をロープにするのは避けましょう。自然木と組み合わせることで、足の筋力を維持しながら、休息時の負担も軽減できます。
爪とぎ止まり木【使用厳禁】+ 備長炭の補足

サンドパーチ(砂を接着剤で固めた止まり木)やセメントパーチ(コンクリート素材)は、足裏の皮膚を削り続けて趾瘤症の原因となるため、絶対に使用しないでください。鳥専門獣医師も危険性を繰り返し警告しており、実際に「足にタコができた」「足裏がただれた」という被害報告が多数あります。
詳しくは爪とぎ止まり木が危険な3つの理由で、獣医師の警告と安全な代替案を解説しています。
備長炭止まり木は例外:週2~3回・数時間の限定使用なら安全
爪とぎ系止まり木の中で唯一、獣医師から一定の評価を得ているのが備長炭止まり木です。ただし、週2~3回・数時間だけの限定使用が原則で、常設は厳禁です。メインは必ず自然木にし、備長炭はあくまで補助として使います。
詳しい使い方については、備長炭止まり木の効果とデメリットで獣医師の見解を含めて徹底解説しています。
比較表:素材別メリット・デメリット一覧
この比較表から明らかなように、インコの足の健康を守るためには自然木が最良の選択肢です。プラスチックは一時的な使用のみ、ロープは補助的に、サンドパーチとセメントパーチは絶対に使用しないでください。備長炭は週2~3回・数時間の限定使用なら安全ですが、あくまで自然木がメインであることが絶対条件です。
インコの足に合った太さの選び方【鳥種別ガイド】

止まり木の太さは、インコが握った時に前後の爪の先端が軽く接触する程度が理想です。太すぎると握れず、細すぎると足裏の一部に負担が集中します。鳥種とサイズに合わせた適切な太さを選び、さらに複数の太さを組み合わせることで、足の健康を守ることができます。
理想的な太さの見極め方
止まり木の太さを選ぶ際の基本的な判断基準を理解しましょう。適切な太さは、インコの足のサイズによって決まります。
前後の爪の先端が軽く触れ合う程度が理想的です。インコが止まり木を握った時、前の指(3本)と後ろの指(1本)の爪の先端がちょうど接触するか、わずかな隙間(1~2mm程度)ができる太さを選びます。この時、足裏全体で体重を支えられる状態になっています。
足裏全体で体重を支えられる太さを選びましょう。太すぎると足を大きく開いて握る必要があり、細すぎると指先に力を入れすぎて握りしめる必要があります。どちらも足裏の一部に負担が集中するため避けてください。
個体差を考慮した微調整も大切です。同じ種類のインコでも、足のサイズには個体差があります。特にオカメインコは、ノーマル(グレー)が他の品種より大柄な傾向があり、ルチノーやホワイトフェイスは小柄なことが多いです。愛鳥が実際に止まり木を握っている様子を観察し、足が無理なく握れているか確認しましょう。
鳥種別・推奨太さ一覧表
インコの種類とサイズによって、適切な止まり木の太さは異なります。以下の表を参考に、愛鳥に合った太さを選びましょう。
これらはあくまで目安です。同じ種類でも個体差があるため、実際に愛鳥が握った時の様子を観察して調整しましょう。前後の爪がちょうど触れ合う程度が、足裏全体で体重を支えられる理想的な太さです。
自然木の止まり木は一本の中で太さが変化するため、「平均的な太さ」が上記の範囲に入っていれば問題ありません。細い部分と太い部分の両方があることで、インコが自分で快適な位置を選べます。
購入前に愛鳥の足のサイズを確認する簡単な方法があります。インコが普段使っている止まり木に止まっている時、爪の位置を観察してください。前後の爪が大きく離れすぎている場合は太すぎ、完全に重なっている場合は細すぎです。この観察結果を基に、新しい止まり木のサイズを選びましょう。
複数の太さを組み合わせる重要性

止まり木を選ぶ際、多くの飼い主さんが「最適な太さを1本」見つけようとしますが、実はこれは間違いです。インコの足の健康を守るには、複数の異なる太さの止まり木を組み合わせることが重要です。
野生のインコは多様な足場を使い分けています。野生のインコは、太い枝、細い枝、平らな岩場など、様々な足場を使い分けています。この多様性が、足の様々な筋肉をバランス良く発達させ、特定の部位への負担集中を防いでいます。飼育下でもこの環境を再現することが、足の健康維持の鍵となります。
太さ別の役割を理解しましょう。
- 細めの枝(推奨太さの下限):移動用、握力トレーニング。インコが細い枝を握る時は、足の指をしっかり握りしめる必要があり、握力が鍛えられます。活発に移動する場所に設置するのが効果的です。
- 中太の枝(推奨太さの中間):メインの休息・睡眠場所。最も長時間止まる場所なので、インコが楽に握れる太さを選びます。餌場や水場の近くに設置すると便利です。
- 太めの枝(推奨太さの上限):リラックス用。インコが太い枝を握る時は、足を大きく開いて握るため、異なる筋肉が使われます。ケージの高い位置に設置すると、インコが安心して休める場所になります。
- フラットパーチ(平らな止まり木):足裏を完全に休ませる場所。握る必要がないため、足の疲労回復に最適です。特に老鳥や足に問題がある子には必須です。
たとえばオカメインコの場合、15mm(細め)、20mm(標準)、25mm(太め)の3種類を組み合わせるのが理想的です。細い枝では足の指をしっかり握りしめる必要があり、握力が鍛えられます。太い枝では足を大きく開いて握るため、異なる筋肉が使われます。この多様性がバンブルフット(趾瘤症)の予防に直結します。
均一な太さの止まり木だけを使っていると、足裏の同じ部分に常に圧力がかかり、血行不良や炎症のリスクが高まります。複数の太さを組み合わせることで、インコが自然と様々な握り方をするようになり、足裏全体の健康が保たれます。
設置する際のコツは、ケージ内に「ゾーン」を作ることです。たとえば、餌場の近くには安定した中太の枝、高い位置の睡眠場所には太めの枝、ケージ中央の遊び場には細めの枝を配置します。こうすることで、インコが自然と様々な太さの止まり木を使い分けるようになります。
止まり木の適切な本数と設置位置

止まり木は最低2本、理想は3~4本を高さと太さを変えて配置します。餌場、水場、睡眠場所それぞれに適した配置があり、インコの動線を考えたレイアウトが重要です。適切な本数と配置により、インコは自然と運動し、足の健康を保つことができます。
最低限必要な本数と理想の本数
止まり木の本数は、インコの生活の質に直接影響します。少なすぎても多すぎても問題が生じるため、適切な本数を理解しましょう。
最低2本は絶対に必要です。1本は睡眠用、もう1本は活動用(餌や水を飲む時)として使います。しかし、2本だけでは足の健康維持には不十分です。太さの選択肢が限られるため、足裏の同じ部分に負担が集中しやすくなります。
理想は3~4本です。太さと高さを変えて配置することで、インコが様々な握り方をするようになり、足の筋肉がバランス良く発達します。3本あれば、細め・中太・太めの組み合わせが可能になります。4本あれば、さらにフラットパーチやロープパーチを追加でき、より充実した環境を作れます。
5本以上は過密でストレスになります。止まり木が多すぎると、ケージ内の飛行スペースが狭くなり、インコが窮屈に感じます。また、掃除の手間も増え、止まり木同士が近すぎてフンが他の止まり木に落ちやすくなります。
ケージサイズとのバランスも重要です。小さなケージに4本設置すると過密になりますが、大きなケージなら4本でも快適です。ケージの幅45cm以上なら3~4本、幅35cm以下なら2~3本が目安です。
オカメインコのケージサイズについては、オカメインコケージの大きさ完全ガイドで、推奨46.5cm以上の理由と失敗しない選び方を解説しています。
設置位置の基本ルール
止まり木をどこに設置するかは、インコの快適さと安全性に大きく影響します。以下の基本ルールに従って配置しましょう。
最上段:睡眠用(太め、壁際)が基本です。インコは野生では木の高い位置で眠る習性があります。高い場所で壁を背にすることで、安心感を得られます。太めの止まり木(推奨太さの上限)を壁際に横向きに設置しましょう。オカメインコの場合は特に、オカメパニック対策として壁際配置が重要です。
中段:活動用(餌場と水場の間)に設置します。インコが餌を食べたり水を飲んだりする時に使う止まり木です。餌入れと水入れの間に、移動しやすい配置にします。中太の止まり木(推奨太さの中間)を使い、安定して食事ができるようにしましょう。
下段:爪とぎ用(備長炭など、任意)を配置できます。備長炭止まり木を使用する場合は、下段に設置します。ただし、常設せず週2~3回・数時間だけの使用に留めてください。また、フンが落ちやすい位置でもあるため、こまめな清掃が必要です。
避けるべき位置を理解しましょう。
- 餌・水の真上:フンが落ちて餌や水が汚染されます。食中毒の原因になるため、絶対に避けてください。
- 扉付近:ケージの扉を開閉する時に、インコがぶつかる危険があります。また、扉の開閉時に止まり木が動いて、インコが驚くこともあります。
- ケージの隅々:インコが移動しにくく、死角になりやすい位置は避けましょう。
高さによる役割の違い
止まり木の高さは、インコにとって重要な意味を持ちます。高さによってインコの行動や心理状態が変わるため、それぞれの高さの役割を理解して配置しましょう。
高い位置は安心して休める場所です。インコは野生では捕食者から身を守るため、高い木の枝で眠ります。この本能は飼育下でも残っており、高い位置にいると安心します。特に夜間の睡眠時は、最も高い止まり木を選びます。ここには太めの自然木を設置し、壁際に配置することで、さらに安心感が増します。
中段は活動と移動の場所です。インコが最も活発に動き回る高さです。餌を食べる、水を飲む、羽づくろいをする、といった日常的な活動はこの高さで行われます。中太の止まり木を斜めに配置すると、インコが上り下りする際に運動になります。
低い位置は遊びと爪とぎの場所です。ケージの下の方は、インコにとって探索や遊びの場所です。おもちゃを吊るすのも下段が適しています。また、備長炭止まり木を設置する場合も下段が適切です。ただし、フンが落ちやすい位置でもあるため、清掃頻度が高くなります。
高低差をつけることで運動量が増えます。止まり木を全て同じ高さに配置すると、インコは横移動しかしなくなります。高低差をつけることで、インコが上り下りする動作が増え、足の筋肉だけでなく全身の運動につながります。
止まり木同士の距離と配置角度
止まり木同士の距離は、インコが軽く羽ばたいて移動できる程度(ケージ幅の半分~3分の2)が理想です。近すぎると歩いて移動してしまい運動量が減り、遠すぎるとストレスになります。
斜め配置(30~45度)で運動量がアップします。全て水平・平行に配置すると単調になるため、高さ・角度・太さに変化をつけましょう。インコの行動パターン(睡眠場所→餌場→水場→遊び場)を観察し、動線がスムーズになるよう配置してください。
若鳥・老鳥への特別な配慮
インコのライフステージによって、止まり木の選び方や配置は変わります。若鳥と老鳥それぞれに適した配慮をしましょう。
若鳥の場合は段階的に慣れさせます。
- 止まり木に慣れるまで均一な太さも選択肢:ケージデビュー直後の若鳥は、自然木の不均一な太さに戸惑うことがあります。最初の1~2週間は、均一な太さの止まり木(プラスチックではなく加工木)でも構いません。慣れてきたら徐々に自然木に切り替えましょう。
- 本数は1本から始めて徐々に増やす:いきなり3~4本設置すると、若鳥は混乱します。まず1本の止まり木で安定して止まれるようになったら、2本目を追加します。1週間ごとに1本ずつ増やしていくのが理想的です。
- 低い位置から始める:若鳥は飛ぶのがまだ上手ではないため、最初は低い位置(ケージの中段以下)に止まり木を設置します。安定して止まれるようになったら、徐々に高い位置にも設置します。
オカメインコ雛のケージデビューについては、オカメインコ雛のケージデビュー完全ガイドで、5ステップの段階的移行法を解説しています。
老鳥の場合は負担を軽減する配慮が必要です。
- 平らな止まり木(フラットパーチ)の追加:握力が弱くなった老鳥には、握らずに足裏全体で体重を支えられるフラットパーチが必須です。長時間止まっていても足が疲れにくく、安定して休めます。
- 低い位置への配置で上り下りを楽に:老鳥は高い位置への上り下りが負担になります。止まり木を全体的に低めに配置し、高低差も小さくします。睡眠用の止まり木も、最上段ではなく中段に下げることを検討しましょう。
- 握力が弱くなるため、太めの止まり木も用意:老鳥は細い止まり木を握り続けるのが辛くなります。太めの止まり木(推奨太さの上限またはそれ以上)を追加し、足を大きく開いて体重を支えられるようにします。
- 床付近にも止まり木を設置:老鳥は止まり木から落ちやすくなります。万が一落ちても怪我をしないよう、床から5~10cm程度の位置にも止まり木を設置します。また、ロープパーチを追加すると、足裏が柔らかく疲れにくいです。
老鳥のケージ環境については、オカメインコの老鳥ケージ完全ガイドで、選び方から改造まで徹底解説しています。
理想的な配置レイアウト
オカメインコを例に、理想的な止まり木配置を具体的に解説します。
最上段(睡眠用):太めの自然木(直径20~25mm)を壁際に横向きに設置。ケージの奥側に配置し、インコが背後を壁に守られた状態で眠れるようにします。長さはケージ幅の60~80%程度。
中段・右側(餌場):中太の自然木(直径18~22mm)を水平に設置。餌入れのすぐ前に配置し、インコが安定して食事できるようにします。長さはケージ幅の40~50%程度。
中段・左側(水場):中太の自然木(直径18~22mm)を斜め(30度程度)に設置。水入れの前に配置します。斜めにすることで、餌場と水場を移動する際に上り下りの運動になります。
下段(爪とぎ・任意):備長炭止まり木(直径18~22mm)を水平に設置。ただし常設せず、週2~3回・数時間だけ使用します。使わない時はフラットパーチや細めの自然木(直径15~18mm)に交換します。
このレイアウトのポイントは以下の通りです。
- 太さが3種類(太め・中太・細め)あり、足の様々な筋肉を使える
- 高低差があり、上り下りの運動ができる
- 餌・水の真上を避けている
- 睡眠用の止まり木が最上段・壁際で安心
- 斜め配置で動線がスムーズ
具体的なレイアウト写真や、セキセイインコ、オカメインコなど鳥種別のレイアウト例は、オカメインコのケージレイアウト完全ガイドやセキセイインコのケージレイアウトで詳しく解説しています。
鳥種別・止まり木の選び方【セキセイ・オカメ・中型インコ】

鳥種によって体格、握力、行動特性が異なるため、止まり木選びも変わります。セキセイインコ、オカメインコ、中型インコそれぞれに最適な素材、太さ、本数を理解し、愛鳥に合った環境を整えましょう。
セキセイインコの止まり木選び
セキセイインコは小型で活発、好奇心旺盛な性格です。この特性に合わせた止まり木選びが重要です。
推奨太さは10~15mmです。セキセイインコの足は小さいため、細めの止まり木が適しています。ジャンボセキセイインコの場合は12~18mm程度が適切です。前後の爪の先端が軽く触れ合う程度の太さを選びましょう。
本数は2~3本が理想です。小さなケージ(幅35cm程度)なら2本、標準的なケージ(幅45cm以上)なら3本設置します。太さを変えて(細め10mm・中太12mm・太め15mm)配置することで、足の健康を守れます。
おすすめ素材は自然木(果樹、ニーム)です。セキセイインコは樹皮をむいて遊ぶのが大好きです。リンゴ、キウイ、ナシなどの果樹の枝は柔らかめでかじりやすく、ストレス解消に最適です。ニームパーチは適度な硬さで長持ちし、抗菌・消臭効果もあります。
活発に動くため複数配置が効果的です。セキセイインコはケージ内を活発に飛び回ります。止まり木を高低差をつけて配置することで、運動量が増え、足の筋力も維持できます。ただし、5本以上は過密になるため避けましょう。
セキセイインコのケージ選びについては、セキセイインコケージ選びのチェックポイントで、人気モデル7選を比較しています。
オカメインコの止まり木選び
オカメインコは中型で温厚、臆病な性格です。オカメパニック対策を含めた止まり木選びが重要です。
推奨太さは15~25mmです。オカメインコは中型インコの中では足が大きめです。ただし、品種によって体格差があり、ノーマル(グレー)は大柄で25mm程度が適切、ルチノーやホワイトフェイスは小柄で18~22mm程度が適切です。
本数は3~4本が理想です。オカメインコは体が大きいため、ケージも大きめ(幅46.5cm以上推奨)が必要です。広いケージなら4本設置しても過密になりません。太さを変えて(細め15mm・中太20mm・太め25mm・フラット)配置しましょう。
オカメパニック対策:角のない自然木が必須です。オカメインコは夜間に突然パニックを起こし、ケージ内を激しく飛び回ることがあります。この時、硬いプラスチックやセメントパーチにぶつかると怪我をします。自然木は適度な弾力があり、万が一ぶつかっても衝撃が和らぎます。樹皮付きの自然木なら、さらにクッション性が高まります。
夜間の安心できる配置(高い位置、壁際)が重要です。睡眠用の止まり木は必ずケージの最上段、壁際に設置してください。オカメインコは背後を壁に守られた状態で眠ると安心し、パニックを起こしにくくなります。太めの止まり木(直径20~25mm)を横向きに設置し、長さはケージ幅の60~80%程度にします。
オカメインコのケージ環境全般については、オカメインコのケージ環境完全ガイドで、失敗しない選び方と日常管理の全知識を解説しています。
中型インコ(コザクラ・ボタン・サザナミなど)
コザクラインコ、ボタンインコ、サザナミインコなどの中型インコは、それぞれ個性的な特徴があります。
推奨太さは12~20mmです。サザナミインコは体が小さめで足も小さいため、12~18mm程度が適切です。コザクラインコとボタンインコは15~20mm程度が適切です。ウロコインコは体が大きめなので15~25mm程度が適切です。
かじり癖が強い種類にはジャワウッドがおすすめです。特にコザクラインコ、ボタンインコ、ウロコインコは非常に強いかじり癖があり、柔らかい果樹の枝は数週間でボロボロになります。ジャワウッドは超硬質で、かじり癖が強いインコでも数ヶ月~1年以上持ちます。価格は高めですが、長期的にはコストパフォーマンスが良いです。
噛む力が強いため硬めの素材が必要です。中型インコの噛む力は、セキセイインコの数倍あります。柔らかい素材だと、インコが遊び半分でかじっているうちに折れてしまい、危険です。ジャワウッド、ニームパーチ、ケヤキなど、硬めの素材を選びましょう。
サザナミインコは温厚で静か、コザクラインコは活発で噛む力が強い、ボタンインコもコザクラと似た性格、ウロコインコは遊び好きで好奇心旺盛、といった種類別の性格特性を理解し、それぞれに合った止まり木環境を整えましょう。
比較表:鳥種別おすすめ止まり木
自然木止まり木の商品別詳細については、インコの自然木止まり木おすすめ7選で、ニームパーチ、ジャワウッド、Y字型など7商品を徹底比較しています。
止まり木のお手入れと交換時期

自然木の止まり木は、フンや水分を吸収しやすくカビの温床になります。日常的な清掃と月1~2回の煮沸消毒、カビや破損のサインを見逃さない定期チェックが重要です。清潔な止まり木を保つことが、インコの健康維持につながります。
日常のお手入れ方法
自然木の止まり木を清潔に保つためには、日常的なお手入れが欠かせません。フンが付着したまま放置すると、木材に染み込んでカビの原因になります。
毎日のお手入れは、フンの除去が基本です。インコのフンを見つけたらすぐに除去しましょう。乾燥したフンは、ブラシ(使い古した歯ブラシなど)や竹串で軽くこすると簡単に取れます。柔らかいフンの場合は、ティッシュやキッチンペーパーで拭き取ります。
週1回は固く絞った布で拭き取りをします。止まり木全体を、固く絞った濡れ布巾で拭きます。水分をできるだけ残さないよう、拭いた後は乾いた布で水気を取ります。自然木は水分を吸収しやすいため、濡れたまま放置するとカビが生えます。
月1~2回は熱湯消毒または煮沸消毒をします。より徹底的な消毒を行います。止まり木をケージから外し、以下のいずれかの方法で消毒します。
- 熱湯消毒:止まり木全体に熱湯(80~90度)をまんべんなくかける。シンクや浴槽で行い、止まり木を回しながら全面にかける。
- 煮沸消毒:大きめの鍋に止まり木を入れ、水から加熱して10~15分煮沸する。最も効果的な消毒方法。
完全乾燥は数日かけて天日干しします。消毒後は、風通しの良い場所で完全に乾燥させます。表面が乾いていても、内部に水分が残っていることがあります。数日かけて天日干しし、内部まで完全に乾燥させましょう。乾燥が不十分だと、カビが生える原因になります。
カビ防止のコツは以下の通りです。
- ケージの換気を良くする:湿気がこもらないよう、風通しの良い場所にケージを置く。
- 水入れの真上には設置しない:水しぶきが止まり木にかかると、常に湿った状態になる。
- 予備の止まり木を用意してローテーション:2~3セット用意し、洗浄・乾燥中も清潔な止まり木を使用できるようにする。
- 定期的に天日干し:月1回は晴れた日に天日干しすると、紫外線の殺菌効果でカビ予防になる。
洗剤を使用する場合は、インコが舐めても安全なもの(クエン酸、重曹、または鳥用洗浄剤)を選び、使用後は十分にすすいでください。人間用の台所洗剤や漂白剤は、成分が残留すると危険なため、できるだけ避けましょう。
ケージ全体の清掃方法については、オカメインコケージ掃除を週3回で完璧にする方法で詳しく解説しています。
交換が必要なサイン
自然木の止まり木は消耗品です。以下のサインが見られたら、新しいものと交換しましょう。
カビが発生している(黒や緑の斑点)場合はすぐに交換が必要です。カビの胞子はインコの呼吸器に悪影響を与える可能性があります。表面だけでなく、内部までカビが侵食している可能性もあるため、漂白や消毒で対処せず、新品に交換するのが安全です。特に梅雨時期や夏場は、カビが発生しやすいため注意が必要です。
かじられて極端に細くなった場合も交換が必要です。インコが楽しんでかじった証拠ですが、強度が落ちて折れやすくなっています。特に細くなった部分がインコの体重を支える箇所(インコがよく止まる場所)にある場合は、すぐに交換してください。インコが止まっている時に折れると、落下して怪我をする危険があります。
表面がひどく汚れて、洗浄しても落ちない場合は交換を検討します。フンや尿酸が木材に染み込んで黄ばんだり、黒ずんだりすることがあります。見た目の問題だけでなく、衛生面でも好ましくありません。煮沸消毒しても汚れが落ちない場合は、交換時期です。
異臭がする場合はすぐに交換が必要です。カビ臭い、酸っぱい臭いがする場合は、内部で細菌やカビが繁殖している可能性があります。インコの健康に悪影響を与える前に交換しましょう。
ひび割れや折れそうな箇所がある場合も危険です。木材は経年劣化でひび割れることがあります。ひび割れが深い場合や、折れそうな箇所がある場合は、インコが止まった時に折れる危険があります。すぐに交換してください。
交換の頻度は使用状況によりますが、一般的には3~6ヶ月程度が目安です。ニームパーチやジャワウッドなど硬い素材は1年以上持つこともありますが、柔らかい果樹の枝は数週間でボロボロになることもあります。インコがかじる頻度、ケージの湿度、清掃頻度などによって寿命は変わります。
止まり木のローテーション術
止まり木を長く清潔に使うためには、ローテーション(複数セットを交互に使用)が非常に効果的です。
予備を2~3セット用意しましょう。ケージ内の止まり木が3本なら、合計9本(3本×3セット)用意します。コストはかかりますが、長期的には止まり木の寿命が延び、常に清潔な環境を保てます。
洗浄中も清潔な止まり木を使用できます。1セットを洗浄・乾燥している間、別のセットを使用します。自然木は完全乾燥に数日かかるため、予備がないと、その間インコは濡れた止まり木か、不衛生な止まり木を使うことになります。
素材別の交換頻度目安は以下の通りです。
- 果樹(リンゴ、キウイなど):1~3ヶ月。柔らかくかじりやすいため消耗が早い。
- ニームパーチ:6~12ヶ月。適度な硬さで長持ちする。
- ジャワウッド:1~2年以上。超硬質で最も長持ちする。
- ロープパーチ:3~6ヶ月。繊維がほつれたらすぐに交換。
発情抑制にも効果的です。止まり木を定期的に交換することは、環境の変化となり、インコの発情抑制にもつながります。特にオスインコは、同じ止まり木に長期間止まっていると、その場所に執着して発情しやすくなります。月に1回程度、止まり木の位置を変えたり、新しいものに交換したりすることで、発情を抑制できます。発情抑制の詳しい方法については、セキセイインコの発情抑制で解説しています。
備長炭止まり木との併用も、自然木の寿命を延ばす工夫のひとつです。週に数回だけ備長炭を使用することで、自然木への負担が減り、長持ちします。
止まり木の自作・手作り方法
市販の止まり木以外に、安全な木の枝を使って自作する方法もあります。コストを抑えられ、愛鳥に合わせたサイズ調整も可能です。ただし、使える木と避けるべき木を正しく理解することが必須です。自然の枝を使うことで、より野生に近い環境を再現できます。
自作に適した木の種類
自作止まり木には、インコに無害な木を選ぶことが絶対条件です。以下の木は安全性が確認されており、自作止まり木に適しています。
おすすめの木(広葉樹)は以下の通りです。
- ケヤキ:硬くて丈夫。日本で入手しやすい。樹皮がかじりやすく、インコが喜ぶ。
- クヌギ:適度な硬さ。樹皮が粗めで爪の摩耗に効果的。
- シラカバ:白い樹皮が美しい。柔らかめでかじりやすい。
- 柳:非常に柔らかく、インコが夢中でかじる。消耗は早いが、遊び要素が高い。
- クロモジ:香りが良い。適度な硬さで長持ちする。
- 柏:硬めで耐久性がある。樹皮が厚く、かじり応えがある。
- 栗:硬くて丈夫。樹皮が粗く、爪の摩耗に効果的。
果樹の木も安全でおすすめです。
- リンゴ:柔らかめでかじりやすい。インコが大好き。
- ナシ:リンゴと同様に柔らかく、かじりやすい。
- ヤマモモ:適度な硬さ。樹皮が美しい。
- キウイ:柔らかめ。太い枝も入手しやすい。
太さのバリエーションが選べることが自作の大きなメリットです。市販品では見つからない太さ(たとえば直径3cm以上の太い枝)も、自然の枝なら入手できます。愛鳥のサイズにぴったり合った太さを選べるのは、自作ならではの利点です。
天然の凹凸がインコの足に優しいです。自然の枝は、小枝が出ていた跡や樹皮の凹凸により、表面が不規則です。この凹凸が足裏への刺激となり、血行を促進します。市販の自然木よりも、さらに野生に近い環境を再現できます。
使ってはいけない木の種類
インコに有毒な木や、安全性が確認されていない木は絶対に使用しないでください。以下の木は危険です。
有毒な木(絶対使用禁止)は以下の通りです。
- 桜(サクラ):樹皮や葉に青酸配糖体を含み、インコが摂取すると中毒を起こす。生木は特に危険。完全に乾燥した枝なら毒性は低下するが、リスクを考慮して避けるべき。
- トチノキ:サポニンという有毒成分を含む。
- 藤(フジ):全体に毒性がある。
- 南天(ナンテン):実だけでなく、葉や枝にも毒性がある。
- イチイ:タキシンという猛毒を含む。
- 夾竹桃(キョウチクトウ):強い心臓毒を含む。
農薬や殺虫剤が使われている可能性のある木も避けます。果樹園の木、公園や街路樹、庭木などは、農薬や殺虫剤が散布されている可能性があります。見た目にはわかりませんが、インコが樹皮をかじることで体内に取り込まれ、中毒を起こす危険があります。
出所不明の流木も避けた方が無難です。海岸や川で拾った流木は、どんな木なのか、どんな化学物質にさらされたのかが不明です。海水に長期間浸かっていた流木は塩分を含んでおり、インコには適しません。
公園や果樹園で採取する場合は必ず許可を取りましょう。無断で木の枝を切ると、器物損壊や窃盗になる可能性があります。管理者に許可を得てから採取してください。自分の庭や山林で採取する場合は問題ありませんが、農薬や殺虫剤を使用していないことを確認してください。
消毒と準備の手順
自然の枝を止まり木として使用する前に、必ず消毒と準備を行います。虫や虫の卵、細菌、カビの胞子などを除去し、安全な状態にします。
STEP1:木の枝を水でよく洗います。採取した枝は、まず流水で表面の泥や汚れを洗い流します。ブラシを使って、樹皮の隙間の汚れもしっかり落とします。枝の先端や根元、小枝の付け根など、細かい部分も忘れずに洗いましょう。
STEP2:大きな鍋で15~20分煮沸消毒します。洗った枝を大きな鍋に入れ、水から加熱して煮沸します。沸騰してから15~20分煮沸し続けることで、虫や虫の卵、細菌、カビの胞子を確実に殺します。枝が長い場合は、半分ずつ煮沸するか、斜めに入れて全体を煮沸します。
STEP3:天日干しで完全乾燥(数日)します。煮沸後の枝は水分を大量に含んでいます。風通しの良い場所で天日干しし、数日かけて完全に乾燥させます。表面が乾いていても、内部に水分が残っていることがあります。特に太い枝は、内部まで乾燥するのに1週間以上かかることもあります。乾燥が不十分だとカビが生えるため、しっかり乾かしましょう。
STEP4:金具を取り付けてケージに設置します。完全に乾燥したら、ケージに取り付ける金具を設置します。市販の止まり木用金具(ステンレス製推奨)を使用するか、針金で固定します。金具は亜鉛メッキではなく、ステンレス製を選びましょう。亜鉛メッキはインコがかじると亜鉛中毒を起こす危険があります。
枝の長さ調整も忘れずに行います。ケージの幅に合わせて、枝の長さを調整します。ノコギリで切る場合は、切り口をヤスリで滑らかにし、インコが怪我をしないようにします。枝の両端が尖っていると危険なので、丸く削るか、樹皮を少し残して保護します。
自作時の注意点
自作止まり木を作る際には、以下の注意点を守ることで、安全性を確保できます。
生木はしっかり乾燥させましょう。生木(切ったばかりの枝)は水分を大量に含んでおり、そのまま使用するとカビが生えます。また、樹液が出る木もあり、インコの羽や足にべたつきます。煮沸後の天日干しで、内部まで完全に乾燥させることが重要です。乾燥の目安は、枝を持った時に軽く感じること、樹皮を押しても湿った感触がないことです。
虫や虫の卵が残っていないか確認しましょう。樹皮の隙間や小枝の付け根など、虫が隠れやすい場所を注意深く観察します。煮沸消毒で大部分は除去できますが、念のため使用開始後も数日間は様子を見て、虫が出てこないか確認します。万が一虫が出てきた場合は、すぐに止まり木を撤去し、再度煮沸消毒するか廃棄します。
樹液が出る木は避けましょう。松や杉などの針葉樹、桜などは、樹液(ヤニ)が出やすい木です。樹液はインコの羽や足にべたつき、羽づくろいの妨げになります。また、樹液には有害成分が含まれていることもあります。樹液が出る木は、止まり木には適していません。
定期的に点検し、劣化したら交換しましょう。自作止まり木は、市販品よりも劣化が早いことがあります。特に柔らかい木(柳、果樹など)は、インコがかじることで数週間でボロボロになります。また、ひび割れや折れそうな箇所がないか、カビが生えていないか、定期的に点検します。劣化が見られたら、すぐに新しいものと交換しましょう。
参考書籍の紹介:より詳しい自作方法や、使える木の種類については、「愛鳥のための手づくり飼育グッズ」(誠文堂新光社)が参考になります。この書籍では、止まり木以外にも、おもちゃや餌入れなどの自作方法が写真付きで解説されています。
インコの自然木止まり木おすすめ7選では、市販品の特徴を詳しく紹介していますので、自作品と市販品を比較する際の参考にしてください。
インコの止まり木選びによくある質問

これらの質問以外にも疑問がある場合は、オカメインコのケージ環境完全ガイドやインコの自然木止まり木おすすめ7選も参考にしてください。また、購入前に不安な点がある場合は、販売店や獣医師に相談することをおすすめします。
インコの止まり木選びで愛鳥の健康を守る【総括】

止まり木はインコが一日の大半を過ごす生活の場であり、足の健康を左右する最重要アイテムです。不適切な止まり木は趾瘤症や関節疾患を引き起こし、インコの生活の質を大きく低下させます。足裏の健康は全身の健康につながるため、止まり木選びに妥協は許されません。
自然木を基本に、複数の太さを組み合わせて配置することで、足裏への負担を分散し、野生に近い環境を再現できます。爪とぎ系止まり木(サンドパーチ、セメントパーチ)は足裏を傷つけるため使用厳禁です。備長炭止まり木は補助的に週2~3回・数時間だけの使用に留め、メインは必ず自然木にしましょう。鳥種別の推奨太さを参考にしながら、愛鳥が握った時に前後の爪が軽く接触する程度の太さを選び、細め・中太・太めの3種類を組み合わせることが理想です。
定期的なお手入れと交換、若鳥・老鳥への配慮、そして愛鳥の足の大きさに合ったサイズ選びが、健康で快適な生活につながります。カビや破損のサインを見逃さず、清潔な止まり木環境を保ちましょう。自作止まり木も、安全な木の種類を理解すれば、愛鳥にぴったりの環境を作れます。愛鳥の足の健康を第一に考え、最適な止まり木環境を整えてあげてください。
参考文献・出典
本記事は、以下の信頼できる情報源を参考に作成しました。正確性と信頼性を確保するため、公式情報、獣医師の見解、実体験、および専門家の知見を組み合わせています。
獣医学的知見
- 海老沢和荘氏(鳥専門獣医師)Twitter投稿:趾瘤症・サンドパーチの危険性・備長炭止まり木の使い方に関する専門的見解
- 鳥類の趾瘤症(バンブルフット)に関する獣医学文献
- 鳥類の足の健康と止まり木に関する研究
SNS・実体験情報
- Twitter(X):実際の飼い主による止まり木使用レポート
- 各種鳥飼育コミュニティ:長期使用者の意見と効果の実感
販売サイト・購入者レビュー
- Amazon.co.jp:購入者レビュー(2023年~2025年)
- 楽天市場:購入者レビューおよび価格情報
- Yahoo!ショッピング:購入者レビューおよび価格情報
参考書籍
- 「愛鳥のための手づくり飼育グッズ」(誠文堂新光社):自作止まり木の作り方
関連記事(当サイト内)
本記事の情報は2025年11月時点のものです。製品仕様や価格は変更される可能性がありますので、購入前に各販売店の最新情報をご確認ください。
記事監修者情報
名前: 山木
経歴: フィンチ・インコ・オウム・家禽の飼育経験を持つ、飼い鳥歴30年以上の愛鳥家。オカメインコブリーダー。愛玩動物飼養管理士。当サイト「ハッピーインコライフ」はオカメインコとセキセイインコの飼い方をメインテーマとしています。科学的根拠と愛情に基づいた実体験を発信し、一羽でも多くのインコとその飼い主が幸せな毎日を送れるようサポートします。











