インコの白内障は飼い主にとって心配な症状ですが、適切な知識と対処法を身につけることで愛鳥の生活の質を維持できます。ここでは13歳のサザナミインコが実際に白内障と診断された体験談をもとに、初期症状の発見方法から獣医師による診断、治療方針について詳しく解説します。
老化による白内障は完治が困難ですが、進行を遅らせる治療法や環境調整により快適な老後を過ごすことが可能です。
特に重要なのは、視力低下に配慮したケージレイアウトの工夫でしょう。急激な環境変化を避け、記憶に頼った行動をサポートすることで、全盲になっても適応できるケースが多いのです。
サザナミインコの白内障の初期症状と発見方法
獣医師による診断と治療選択肢の実際
老鳥ケージレイアウトの正しい調整方法
当サイト運営者の老鳥ケージレイアウト試作
視力低下したインコの快適な生活環境づくり
サザナミインコぴよちゃん(13歳)の白内障体験談
13歳のサザナミインコが白内障と診断された飼い主による実体験レポートです。初期症状の発見から獣医師の診断、治療方針、そして老鳥ケージレイアウトの工夫について詳しく紹介します。
サザナミインコの飼い主の寄稿
ある夜、私のサザナミインコ ぴよちゃんの目が少し輝いて見えることに気づきました。
13歳ともなると 止まり木から落ちたり、足指の掴む力が弱くなってヨボヨボ歩きが多くなっていたので、ケージのレイアウトや止まり木を見直そうかと思い始めていた矢先のことでした。
どうして目がこんなにキラキラしているんだろう?…とよーく見てみると、光っていると思った黒目の真ん中が白くなっているではありませんか。
これは白内障だろうか?目を痛がったり痒がる様子はありませんでしたが、心配になりました。
ぴよちゃんの目を主治医の先生に診ていただいたところ、案の定
検査方法は人間のそれと同じで、専用の目薬をさして調べます。検査の結果はやはり白内障の診断がおりました。
インコの白内障の治療法は?目薬で白内障は治る?
家にいた保護鳩🐦も白内障になりました。原因は、老化(保護して約15年)かなとの診断でしたが血糖値も高く糖尿の薬も飲んでたので糖尿病も関係してたかも。
— 華月 (@kaguya9991) August 28, 2020
白内障のインコに対して飼い主ができることはあるのか?…と思い、先生にたずねると
そうあっさり言われました(2023年時点)
飲んでも問題はないので、心配ないですよ。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) September 17, 2020
人間と同じで、目薬は治療というよりも、白内障の進行を遅らせるもののようでした。
鳥の白内障を治すことは難しいです。人では人工レンズに交換する手術をしますが、鳥ではできません。進行を遅らせる目薬はあります。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) August 28, 2020
お家でできることは、ストレスの低減、バランスの取れた食事、発情と食事量の管理になると思います。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) July 11, 2020
鳥の若齢性白内障の原因は、糖尿病の合併症や外傷性以外の場合は不明です。進行を抑える目薬はありますが、効果はほとんど期待できません。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) September 19, 2023
老鳥ケージレイアウトをあわてて変更するのは危険な行為
こちらは両眼が白内障になったコザクラインコです。多くは老齢性で起こります。視力は白濁の程度やその他の眼の病気の有無によります。視力がほとんどなくなっても徐々に見えなくなった場合は、普通に生活することが多いので、ケージ内のレイアウトを変えない方がいいです。上手く生活できていないよう… pic.twitter.com/mVhVxveBCu
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) September 18, 2023
今まで3羽、白内障で全盲になってしまった子達をお世話した事があります。
鳥さん達は生きる事に前向きで、
飼い主がしっかりとサポートすれば、他の子達にもまけないくらいに元氣で居てくれる事を学びました。— 🕊️鳥飼さろめ️🕊️ (@Salome4938) October 2, 2021
インコの中には白内障で全盲になる子もいるけれど、どこに何があるかを覚えているので、ケージ内をそのままにしておけば、視力を失っても適応できる場合が多いとのこと。
私は先生の言葉に「なるほど」と納得し、一部の止まり木の位置はそのままに少し細いものに変えてみました。するとケージ内の移動がスムーズになり、止まり木から落ちやすかったぴよちゃんが誤って落ちることがなくなりました。
位置を変えずに、大掛かりな変更をしないことが正解だったのです。
老鳥ケージレイアウト・バリアフリー・暮らし方…正答は1つではない
ぴよちゃんの白内障はその後にそれほど進行しませんでした。そのため止まり木の変更以外には、ケージレイアウト変更やバリアフリー化を考える必要はありませんでしたが、ネットで老鳥を飼っている人たちの老鳥用ケージレイアウトを見て「なるほど〜!」と参考になった点をいくつか発見しました。
ケージ内居住空間を下げるのではなく底上げする
私は下に落ちた時の衝撃を和らげるために止まり木やバードテントの位置を下げることを考えていましたが、ある飼い主さんは逆に底上げをすることで同じ効果を実現していました。この逆転の発想は目からウロコでした。
老鳥が落下しづらい環境を整える
別の飼い主さんはステップ(インコが上に乗ってしまえる台)を大きくして、その上で移動ができるように改造していました。
はしごと止まり木の位置を変えることで、落下しにくい環境を作っている飼い主さんもいました。
愛鳥に少しでも快適に過ごしてほしい!…と真剣に考えている飼い主さんたちの愛情と発想力には感心するばかりでした。


老鳥ケージレイアウトの最適解は飼い主の観察眼に委ねられる
インコはしゃべること(状況を伝えること)ができないので、飼い主はインコの様子を観察して快適に暮らしているのかを判断するしかありません。だからこそ、おそらくどの飼い主さんも「これが正解だ」「ベストだ」とは思っておらず、もっと良い方法はないだろうか?と、多くの人が日々試行錯誤を繰り返しているのではないかと思います。
白内障と診断された時、ぴよちゃんへの先生の見る目(対応の仕方)が変わったのでは?と、私は感じました。それまでは「大切に育てればまだまだ先は長いから」といった意味合いのアドバイスをたくさんいただいたのですが、今回の受診では「変えないことが大切」とのアドバイスだけ。
その時の私が感じたのは
白内障と診断されてから、さらにベタベタに甘えるようになったぴよちょんとともに過ごす時間を、私自身も無意識のうちに惜しむようになっていたような気がします。
ぴよちゃんは14歳で、突然、あっという間に虹の橋を渡ってしまったので、老鳥介護や看病で苦労することはありませんでした。
でも今思うことは・・・シニアインコと暮らすのは、必要であれば身体のお世話をしながら、赤ちゃん返りした甘えん坊インコを、ただただかわいがることに尽きる のではないかと感じるのです。
そのためには幼鳥の頃からインコの様子をしっかりと見守りながら、日々 鑑識眼を育んでいくことが大切だと思います。
【体験談はここまで】
インコの白内障について知っておきたいこと
インコの白内障は老化現象として現れることが多く、完治は困難ですが適切な対処により快適な生活を送ることができます。症状の特徴や治療法、老鳥ケアのポイントを解説いたします。
インコの白内障の症状と原因
インコの白内障は主に加齢によって発症し、目の水晶体が白く濁る病気です。初期症状として「目がキラキラと光って見える」という飼い主からの声があります。これは水晶体の濁りによる光の反射が原因となります。
目の中央部分が白く濁る
光に反射してキラキラと見える
視力の低下により動作が不安定になる
痛みや痒みなどの症状は通常現れない
症状 | 初期段階 | 進行段階 |
---|---|---|
目の濁り | 軽度の白濁 | 明らかな白濁 |
視力 | やや低下 | 大幅に低下 |
行動変化 | わずかな不安定さ | 明らかな動作の変化 |
食欲 | 通常通り | 環境次第で変化 |
症状は個体差があります |
白内障の原因は老化が最も多く、糖尿病や外傷による場合もあります。
治療法と進行抑制について
残念ながら、インコの白内障に対する根本的な治療法は限られています。獣医師による進行抑制の目薬処方が一般的ですが、効果は限定的とされています。
進行抑制用の点眼薬処方
痛みがある場合の対症療法
定期的な眼科検査での経過観察
生活環境の調整による快適性向上
治療法 | 効果 | 注意点 |
---|---|---|
点眼薬 | 進行抑制 | 完治は期待できない |
手術 | 不可能 | 鳥類では技術的に困難 |
環境調整 | 生活の質向上 | 最も重要な対処法 |
獣医師との相談が必要です |
人間のような人工レンズ手術は鳥類では技術的に困難なため、環境を整えて快適に過ごせるようサポートすることが最も大切な対処法となります。
老鳥ケージレイアウトの基本原則
白内障のインコには、急激な環境変化を避けることが重要です。視力が低下しても、慣れ親しんだレイアウトであれば適応しやすいためです。
既存のレイアウトを大幅に変更しない
止まり木は細いものに交換のみ
エサと水の位置は固定する
底上げによる落下時の衝撃軽減
ステップや台の活用で移動をサポート
対策 | 目的 | 具体的方法 |
---|---|---|
止まり木調整 | 握力低下への対応 | 細い止まり木に交換 |
底上げ | 落下時の衝撃軽減 | ケージ底にクッション材 |
ステップ増設 | 移動の安全性向上 | 大きめの台を複数配置 |
位置固定 | 記憶による行動支援 | エサ・水の場所を変えない |
個体の状態に合わせて調整 |
特に重要なのは、飼い主が「良かれ」と思って行う大幅なレイアウト変更が、かえってインコのストレスになることです。観察を続けながら、必要最小限の調整にとどめることが推奨されます。
最近試作してみた老鳥ケージの底上げ法【ハンディキャップを持った鳥用】
ここでは、最近筆者が試してみた老鳥用ケージレイアウトを紹介します。
ハンディキャップを持った老鳥用ケージレイアウトを、以下の条件を満たすように考えました。
片足がない。もう片方も不自由で、這いずるように移動する老齢オカメインコ(止まり木にとまれない個体)
移動が難しく、ケージ内で羽ばたかないので、それほど広いスペースを必要としないと予測
金網の伝い歩きがないため、ケージはステンレス製ではなく銀メッキを選択
手のり鳥ではあるが、自力でケージから出てこられないので、扉が大きく開く「HOEI手のり」シリーズは却下して「HOEI35角」を選択
這いずるとしても移動しやすく、くつろげるスペースを確保する
餌を食べやすいように、一般的なフードカップを使わず、浅い皿を利用
万一落下したとしても、段差は3~5cm程度なので、体を傷めることはないと予測(落下したことは一度もなし)
くつろぎスペースは「SANKO 木製チンチラステージ」を2個並べて広いスペースを確保。床が硬いので、タオルやクッション性のあるものを敷く(誤飲・誤食しないものに限る)
いかだのように並べた「かじり木コーン」を大小合わせて7本使用(いかだ風のくつろぎスペースにМサイズを4本、餌の皿の落下防止と固定に3本)
フンきり網を取り外して底部をフラットにするだけでもいいのですが、プラスチック部分が意外に高さがあるので外の景色が見られないうえに、目線が低すぎて鳥が精神的に不安定になるように思えました。

HOEIケージに付属している水漏れ防止枠。これを逆さに使って底上げしました
そこで、ケージに付属している水漏れ防止枠(シャッター) を逆さ にして設置。その上にフンきり網を載せました。これにより、ケージの底面から12センチほどの底上げができました。ゴミはフンきり網の下のトレーに落ちるので、掃除も楽です。
チンチラステージとかじり木コーンを利用して、L字型に移動できるスペースを配置。4本並べたかじり木コーンは少し隙間を作っているので風通しが良く、この子のお気に入りスペース。ダラーッとかじり木に体重を預けて、脱力してお昼寝していることが多いです。
ケージはHOEI35では小さすぎるか?とも思ったのですが、放鳥していてもタオルを敷いたケージの上で横になってくつろぐだけで、ほとんど動き回らない子なので、今まで入っていた465ケージのスペースは要らないのではないかと思いました。
今のところは狭さを感じていない様子に見えますが、この先狭そうだと感じるようであれば、このケージはフィンチに譲って、再び465ケージに移動する予定です。
餌入れは深さがあるものだと食べるのに苦労しているので、グラタン皿のソーサー部分を使っています。フラットなので、腹ばいでも楽に餌を食べられています。水入れは場所ぶさぎにならないように、隅にコンビネーションフィーダーを設置しています。
将来、また改良の余地が出てくるかもしれませんが、現状は問題なさそうだなと感じているレイアウトです。
インコの白内障によくある質問と回答
インコの白内障は完治しますか?
残念ながら、インコの白内障を完治させる治療法は現在ありません。人間では人工レンズの手術がありますが、鳥類では技術的に困難とされています。進行を遅らせる点眼薬はありますが、効果は限定的です。最も大切なのは、愛鳥が快適に過ごせる環境を整えることでしょう。
白内障のインコは痛がりますか?
通常、白内障そのものに痛みはありません。しかし、ぶどう膜炎などの併発がある場合は痛みを感じることがあります。目を頻繁に擦ったり、元気がなくなったりする様子が見られた場合は、速やかに獣医師の診察を受けることをおすすめします。定期的な検査で合併症の早期発見も大切です。
白内障は治すことがでませんので、痛みが無くなったので治療終了になったのだと思います。大丈夫かどうかは診てみないと分かりませんが、痛みやぶどう膜炎の併発がないかによると思います。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 18, 2021
白内障でも痛みが出ることはあります。ジクロフェナクの点眼で白濁も痛みも治ったのであれば、ぶどう膜炎だったのかもしれません。白内障の白濁はジクロフェナクでは治らないです。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 17, 2021
ケージのレイアウトはどう変えるべきですか?
急激なレイアウト変更は避けるべきです。視力が低下したインコは、記憶に頼って行動するため、大幅な変更は混乱を招きます。止まり木を細いものに交換する程度に留め、エサと水の位置は固定しましょう。底上げや大きめのステップ設置など、安全性を高める工夫は有効です。
白内障の進行を予防する方法はありますか?
加齢による白内障の完全な予防は困難ですが、糖尿病の管理や外傷の防止は重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスの軽減が全身の健康維持につながります。また、定期的な健康診断により、早期発見・早期対応が可能になります。日頃からインコの様子をよく観察することも大切でしょう。
全盲になった場合でも普通に生活できますか?
視力を失ったオカメインコさんの動画です。急に視点が定まらなくなりました。原因は、虹彩毛様体と網膜櫛の変性です。指を近づけると何かを感じて若干反応はするものの、見えないので避けたりしなくなります。ケージ内のエサと水の場所を変えなければ、見えなくても普通に食事できることが多いです。 pic.twitter.com/rFOi5RCfPD
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) July 10, 2020
多くのインコは全盲になっても、慣れ親しんだ環境であれば適応して生活できます。ケージ内のレイアウトを変えずに維持することで、記憶を頼りに行動できるためです。ただし、飼い主による細やかな観察とサポートが必要になります。愛情深いケアがあれば、他の健康なインコと変わらない生活を送ることができるでしょう。
インコの白内障は適切なケアで快適な老後を過ごせる【総括】
白内障は主に加齢により発症する眼疾患
目の中央部分が白く濁り光に反射する
完治は困難だが進行抑制の点眼薬は存在
人工レンズ手術は鳥類では技術的に不可能
急激なケージレイアウト変更は避けるべき
止まり木は細いものへの交換が効果的
エサと水の位置は固定することが重要
底上げによる落下時の衝撃軽減が有効
ステップや台の活用で移動をサポート
記憶に頼った行動ができる環境維持
定期的な獣医師による経過観察が必要
全盲になっても適応可能なケースが多い
飼い主の観察眼と愛情が最も重要
バランスの取れた食事とストレス軽減が予防に有効
個体の状態に合わせた柔軟な対応が求められる
インコの白内障は完治が困難な疾患ですが、適切なケアと環境整備により、愛鳥が快適な老後を過ごすことは十分可能です。急激な変化を避け、日頃からの観察を大切にしながら、愛鳥との貴重な時間を大切にお過ごしください。